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「こだわる!」をカン違いしているクライアントが暴走してきたので上司に泣きついて撤退することになった話。

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「それがプロの仕事だろ!」と言ってくるクライアントは、自分の無茶を無理やり押し通すことが目的なので、「いいえ、プロだからこそ、できないことははっきり申し上げます」と言ったほうがいいという経験をしました。

 

 


 

伝えたいことがあふれているのにひと文字もカタチにできないというクライアントがおりまして。その方に替わって言語化するという仕事がずっとつづいていました。で、こちらのお客様なのですが、言語化できないくせに言語化してきたものについては難癖をつけるのは人並み以上でして。それが文章のプロとしてはいかがなものかという修正だったりして、提言しても「これでいい!」と押し切られ、同じところの修正をくり返しくり返しやらされ、いつまで経っても終わらない仕事に関わったためチンチンが勃たなくなった…というのは以前お話しした通りです。

 

▼こちらの話▼

retrogameraiders.hatenablog.com

 

今回は、このお話の完結編です。というか終わらせました。

 

ある日、この仕事のクライアントであるさわやかさんと都内某所の打ち合わせで俺は衝撃的なことを耳にします。「できた原稿を〇〇〇研究の第一人者の先生に確認してもらう」。その先生はこれまで本を何冊も出している方だそうで、その先生によるこの本のフィードバックを受けて、この本はより高みへとクラスチェンジするのだとか。さわやかさんは机の向こうで恍惚とした表情を浮かべていました。俺が愕然とした理由。それは、俺の認識ではこの本は9割完成していたからです。

 

前回、この本にまったく関わっていない編集者に本を見せたことにより、変なフィードバックが返ってきたため、余計な仕事が増えたばかり。これと同じように、本づくりの企画から関わっていない外部の人間が中途半端に入って意見を言わせるなんて、制作物が迷走するだけなので本来はやってはいけない行為です。迷走=俺の仕事が増える、であり、この仕事が時間割でお金をいただけるものならばそれもアリですが、すでに上限金額が決まっているものなので、さらに赤字が増えるだけ。そもそも、何勝手によく分からない先生に見てもらうことになっているんだよ!

 

「僕は前に言ったよ」

 

言ってねえよ!自分の仕事が増える重要事項を俺が聞き逃すはずがねえだろ!…と心の奥底では思いましたがグッとこらえて、「その方は、いつ原稿をご覧になられて、いつフィードバックを返して下さるのですか?」とお聞きすると、「分からない。大変お忙しい方だから、こちらから急かすことなんてできない」とのこと。マジ、ふざけんなよ!しかし、さわやかさんは言います。「でも、いい知らせが1つあるよ」。ほうほう、どんなことでしょう。「先生は完璧主義者なので、時間をかけてくれて、たくさんためになるフィードバックをいただけると思う」とな。こいつ、ふざけてんのか!?

 

来月納品で話を進めている中で、勝手に外部の人にみてもらう制作工程を作って、しかも期限が分からない。さすがにこれは看過できないと考え、俺は「申し訳ございませんが、それはお受けしかねます」と答えました。すると、さわやかさんは「ん?どういう意味?」と答えました。「来月納品で進めるということは事前にご了承いただいているはずです。来月納品を守れない可能性がある制作工程を入れることは、こちらとしてはお受けできません」と俺は言ったんですね。それに対してさわやかさんは言いました。

 

「それは、プロとしてどうなの?」

 

クライアントに寄り添って、受けた仕事を完遂するのがプロの仕事ではないのか、とさわやかさんは続けます。それはたしかにその通り。くそ!知り合いだからと言って、契約時にきちんと業務範囲を確認しておかなかったことが死ぬほど悔やまれる!ぐぬぬ!そして、さわやかさんは続けます。

 

「最初に出す本が、作家としてのその人の評価を決めると言っても過言じゃない。だから僕は徹底的にこだわりたいんだ。じっくり、時間をかけて、いろんな人の意見を取り入れて、吟味したい。だから、締切とか納期なんてあっちゃダメなんだよ」。

 

恐ろしい言葉をさわやかさんは続けます。「ジョーンズ君が不服と思っているなら上司の方に相談してごらん。きっと僕が言っていることが正しいと言うさ。だって、僕はお客様だからね。クライアントの要望には寄り添うのが鉄則だろ」。自分ひとりで判断すべきことじゃなかったので、俺は持ち帰って上司に相談しました。

 

「ダメですね。これ以上は受けられない話をしましょう」。

 

幸い、ウチの上司は話の分かる人なので、契約時にきちんと業務範囲を示しておかなかったことはこちらの非だったとしても、さすがに限度を超えた要望が出ていると判断。受注してきた営業にも相談し、そちらも「ひどい話ですね!俺がガツンと言ってきますよ!」と言ってくれました。ああ、俺は仲間に恵まれているなぁ。いや、よくよく考えたらこれが普通で、さわやかさんがおかしいだけか。

 

てなわけで、さわやかさんを紹介してくださった経営者さんに相談に行き、さわやかさんに説得をしてくださった結果、なんとか近日納品で話がまとまったのでした。めでたしめでたし。

 

で、

 

近日納品で話し合いを進めましょうと、再び俺とさわやかさんで都内某所でミーティングを行なうことになりました。近日納品ということは、印刷・製本に2週間、その他の装丁などの業務に3週間はかかると予想されるため、近いうちにテキスト部分はFIX(完成)させなければなりません。それについては問題ないですか?とさわやかさんにお聞きしました。すると、「うむ」と頷くさわやかさん。よしよし。そう思いながら、早速打ち合わせを進めようとしたところ、「ちょっと待って」とさわやかさんが言います。「僕からもジョーンズくんに1つだけ約束してほしいことがある」とのこと。何ですかと聞き返しました。

 

「僕はこの本に賭けている。この本は今、生きることに苦しんでいる人たちの救いになる本でなければならないと思っている。そこで大切なのは、内容のクオリティも大切だけど、この本自体がクリーンな気持ちで作られているかどうかなんだ」。

 

「僕はね。納期を守るという話をしたけど、本当は納期なんて守りたくない。なぜなら、それはジョーンズくんを苦しめることになるからだ。僕はこの本づくりに賭けているから一切妥協をする気はない。読み返したんだけど、今のこの原稿では〇〇先生のフィードバックを増やしてしまう気がする」。

 

「だから、僕が考えた構成の通りイチから作り直したい。〇〇先生のフィードバックも甘んじて受けるし、僕もどんどん修正を入れていく。締切に間に合わせるために、ジョーンズくんは大変になると思う。でも、絶対にきっといいものが出来上がると思う」。

 

「僕がジョーンズくんにお願いしたいのはね。たった1つだけ。笑顔で仕事をして欲しいということ。ビジネスとか、締切とかを抜きにして、人類のためになる本づくりに参加していることに喜びを感じてほしい。それだけなんだ」。

 

どうだい?と聞いてくるさわやかさんに対して俺は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ビジネスですし、締切は守ってもらいますし、物理的に受けられない業務量をお引き受けすることは約束できません。近日中での原稿FIXは、絶対です。俺は制作物の完成のために尽力いたしますが、こちらの感情まで要求範囲を広げないでください」。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とお答えしました。

 

さわやかさんは、「なるほど」と答え、「私の全身全霊をかけた本づくりにおいて、ジョーンズくんの存在が“不純物”になってしまったのは本当に残念だ。このまま進めてしまっても意味がないので、このプロジェクトは現時刻をもって終了とする!」

 

と高らかに宣言すると、立ち上がって一方的に帰ってしまいました。ご破算というやつです。

  

その後、社長を交えて反省会が開かれたのですが、事前のコミュニケーションを充分に行なわなかったことの問題と、先方要求を可能なかぎり受けてきたことがモンスタークライアントを生んだのではないか問題が話し合われ、こちらにも問題点があった反省もあったのですが、さわやかさんの性格や価値観を考えると、どのルートで進んでも結局同じ結末にたどり着いていたような気もしている俺です。

 

とりあえず、ストレスのもとがなくなった俺は、絶賛、もう1つのレトロゲームブログを更新しているので、興味がある方は読んでみてください。

 

仕事をする上で、「できない」と考えずに「どうすればできるか」を考えることは大切だと思うのですが、クライアントとの良好な関係を築くためには、「できる範囲」もきちんとお伝えしていくことも大事なんだなぁと学びました。正反対のことを言っているようですが、たぶん、両立はできるはずです。

 

おわり