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たったひと言が人の心をなぐさめる、たったひと言が人の心を傷つけるという話。

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こんにちは、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
「たったひと言が人の心をなぐさめる、たったひと言が人の心を傷つける」。これは、小学校の時の校長先生が卒業式で話してくれたことで、俺は妙に記憶に残っている言葉だったりします。そして大人になった今、本当にその通りだなと思うことと何度も出くわしてきました。

 

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知り合いの女の子から聞いた話です。

 

その子は、とある飲食店でパートとして働いています。で、このコロナ禍です。緊急事態宣言が発令され、4月・5月とお店は長期休業を余儀なくされました。で、営業再開日も決まり、その準備を進めていたある日、社長から「みんな集まれ」と召集がかかりました。大事な話があるそうです。

 

「社員が二人辞めた」

 

社長のその言葉に全員が息を飲みました。飲食店で働いたことがある方は分かると思うのですが、基本的に飲食店における正社員配属は最低限度数です。というのも、もっとも人件費がかかるのが正社員であるため、ある程度の人数は必要なんだけど、それ以上はいらないのが飲食店における正社員。分かりやすく言えば、ギリギリの人数でお店を回しているところが多いのです。

 

そこにきて正社員二人が辞めた。この抜けた穴を埋めるのは相当難しいです。募集をかけたとしても、田舎の街の飲食店の正社員スタッフはなかなか応募が来ません。どうするのか。話を聞いているみんなの顔に不安の二文字が浮かびます。みんなが社長の次の言葉に注目しました。

 

「みんなの力を貸してほしい…!」

 

社長の話はこうでした。みんなも分かっている通り、正社員二名が会社を辞めたことで、従来の体制でお店を回すことは難しくなっている。そのため、パートさんたちの力が借りる新しい体制を作らなければならなくなった。思い返してみると、パートさんは正社員と同様に、5年前の開店時から活躍してくれている者ばかり。お店に愛着もあるだろうし、「もっとこうしていきたい」という思いもあったと思う。従来の体制では、パートは社員からの指示に従ってもらうことになっていたが、それは同時に活躍の場を奪っていたとも思う。新しい体制では、正社員・パートに関係なく、いいお店にしていくために誰もが自由に意見を言えるお店にしていきたいと思う。だからこそ、みんなの力を貸してほしい…!

 

「ここは、君たちのお店だ…!」

 

その社長のひと言は、みんなの心につきささり、会合は参加者たちの拍手に包まれて幕を閉じたそうな。そして、いなくなった正社員たちの分の仕事をパートさんたちが担当することになりました。すると、パートさんたちは大はりきり。「こうしたほうがいいんじゃないか?」「こういうサービスがあったほうが…」。そんな話し合いが積極的に行われ、テーブルを準備するための下準備方法、電話お問い合わせ時のトークマニュアル、ランチメニューのお得さのアピールなど、これまでの正社員がまったく働いていなかったことが露呈するほど、パートさんたちは大活躍したのでした。結果、正社員二名退職というハンディを感じさせないほど、お店は営業再開した後、たいへん盛り上がったのです。

 

パートさんたちは、自分たちのお店のためにいろいろ知恵を絞りました。シフト時間後のミーティングにも積極的に参加し、パートさんたちで仕事終わりにファミレスに集まって話し合いをしたり、家に帰ってからの時間でマニュアルを作ったりしたそうです。お店はパートさんが前面に出てくるようになってから変わりました。

 

ある日、仕事が終わった後、パートさんたちがファミレスで業務改善の話をしていると、1人が「ねえ、これ知ってる?」とスマホを見せました。お店の求人広告です。社長から聞かされていたパートスタッフ増員のための求人広告でした。時給を見ると、自分たちの以前の金額と同じ。後輩たちが入ってくる。今度は、育成マニュアルを作らないと!といった話で盛り上がりました。そして一人がワクワクした様子で話題を振りました。

 

「ねえ、私たちの時給、どれくらい上がるのかな?」

 

毎週開かれている、お店での勤務シフトが終わった後のミーティング。ここでは、社長からパートさんたちに連絡事項を話す場であるとともに、お店を良くするために何でも話していい・なんでも聞いていい場でもありました。いろいろな話題が出てくる中、昨日のパートさんが社長に質問しました。「今度入れるパートさんの時給は前の私たちと同じ金額ですよね。私たちの給与はどれくらい上がるんですか?」

 

「はあ?ふざけんなよ!」

 

ダアン!社長の怒号とデスクを叩く音が事務所に響きわたり、パートさんたちはそろってビクッと肩をすくめました。社長は怒号は続きます。「俺、嫌いなんだよ!他の人の給料がいくらかとかそういう話!関係ないだろ!仕事ってお金じゃないだろ!」。涙目になったパートさんは小さく手を上げて反論します。

 

「いえ、仕事でお金は大事だと思います…」

 

ダアン!ふたたびデスクが思い切り叩かれ、社長が怒鳴りました。「聞いていいことと悪いことがあるだろ!!」。社長のこの反応に、パートさんたちはみんな、「え…まさか…」という思いが膨らみ、別のパートさんが社長に聞きました。「もしかして、私たちの時給は変わらないんですか?」。すると社長は答えます。「パートは一律同じ金額だよ」。パートさんは尚もしつこく聞きます。「新人と私たちではやっている仕事量が違うのに、同じ金額なんですか?」「そうだよ」「それはなぜですか?」

 

「パートは替えきくから」

 

このひと言を聞いた瞬間、何かが音を立てて崩れていくのを、その場にいたパートさんたちは感じたそうです。で、給料日。渡された明細書には、お店で働いた後のミーティングの分の給料は1円も入っていなかったそうな。そしてパートさんたちはがんばることがバカバカしくなって、必要最低限の仕事しかしなくなったのだとか。

 

たったひと言が人の心を奮い立たせるし、たったひと言が人の心をへし折ってしまう。

 

パートスタッフの心を折った張本人である社長は、いまだに自分の失言に気がついておらず、正社員を辞めさせてパートスタッフに権限委譲することで固定費削減させる計画を提案したコンサルタントの失策だと考えているそう。この話を聞いた俺の感想は、「きれいなカタチのやりがい搾取だね」でした。

 

人間は理屈では行動しません。感情で行動するものです。その感情は心で生まれるものなわけで。どうせなら、俺は誰かの心にいい影響を与える言葉を話せる人間でありたいと思う話でした。

 

 



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