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『魔界村』っぽい体験をしたときの話。

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今週のお題「激レア体験」 

これは中学生のときの話です。

 


 

俺が住んでいた町は田舎だったので、ゲームセンターなんて気の利いた施設はなかったんですね。ゲーセンのゲームができるのは、駄菓子屋だけでした。そんな駄菓子屋ゲーセンに入り浸っている常連のオジサンがいたのです。ヒゲがもじゃもじゃで、和製ジョージ・ルーカスみたいだったので、俺たちは『魔界村』の主人公の名前から取って「アーサー」と陰で呼んでいました。

 

アーサーは俺たちが学校を終えて駄菓子屋ゲーセンに行くと、高確率で遭遇するほどビデオゲームが大好きだったようです。俺たちがよく通っていた駄菓子屋ゲーセンは、敷地が結構広くて、店の入り口側に駄菓子が置いてあり、奥はテーブル筐体が10台くらい並んでいました。アーサーはいつもそのテーブル筐体の1つに座り、タバコをくわえながらゲームをしていたのです。

 

作業服を着ていたので、今思えば、工場の早番勤務(15時あがりシフト)の人だったのかもしれません。

 

アーサーは年齢不詳でした。一方、俺たちは中学生。年齢が離れすぎていたし、もともと陰キャだった俺たちは、そんな歳の離れたおじさんに話しかけることもなく、もちろんアーサーから話しかけてくることもなく、俺とアーサーは「行きつけの駄菓子屋ゲーセンでよく会う顔見知り」同士でした。

 

しばらくすると、俺は親の命令で5駅先にある街の超進学塾に通わされることになり、ほぼ毎日、学校が終わると塾に行く、という生活を送る羽目に。帰ってくるのはいつも21時すぎでした。

 

ある夜、俺は駅から自宅のある住宅街に帰っていたのですが、その日は、なんとなく気分で、いつもと違う路地に入って、気分転換にちょっと遠回りをしながら帰ろうとしていました。

 

その刹那、

 

大人が怒鳴る声が聞こえたかと思うと、続いて何かが割れる音がつづき、ドダドタドダドダドダ…!!とすさまじい音が。俺は、何が起こったのかよく分からなくて、周囲を見渡した時、斜め前にあったアパートの2階の1室のドアが開いていて、部屋の灯りが見えました。たぶん、その部屋から出たと思われる、人影がダダダダタダ…とすごい音を立てて鉄でできた階段を降りて(落ちて?)、こっちに向かってくるのでした。

 

あまりにも咄嗟のことで、俺は髪の毛が逆立つくらい吃驚してしまい、ああいうとき、人間って本当に動けないものですね、硬直してしまいました。でも、瞬間的に興奮状態になってアドレナリンが出ていたのかもしれません。黒い人影の1人がこっちに向かってきていて、電柱に備え付けられている灯りの下に入り、顔が灯りに照らされたのが、すべてスローモーションで見えた、と記憶しているんですよ。

 

逃げている人影は、あのアーサーでした。

 

アーサーもこちらに気がついたらしく、「あっ、君は…」という顔をしたのがゆっくり見えた気がするんですね。アーサーは上半身ハダカでパンツ一丁でした。たぶん、裸足だったと思いますが、そのまま決死の表情で俺の横を駆け抜けていったのです。その一瞬あと、今度はケモノみたいな声を喚き散らしながら、髪の長い女の人が、たぶん、フォークを手に持って、大人の本気走りでアーサーを追いかけていきました。

 

まさに一瞬で嵐が過ぎ去ったようなあと、周囲の家という家の窓やドアが開いて、「なんだなんだ?」と人々が湧いてくることに。俺はやたらドキドキする心臓を整えながら、気を取り直して家路をついたのでした。

 

たぶん、痴情のもつれ、というやつで、アーサーが浮気相手とベッドインしたところを奥さんか恋人に押さえられた、という感じだったのではないかと、後から思い返して、俺は予想しています。それにしても、「THE 激情!」という感じの大立ち回りは、なかなか見れるもんじゃありません。しかも、アーサーがパンツ一丁で走り去っていく、という『魔界村』みたいな光景を特等席で見た、という話でした。