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【本のレビュー】『100日後に死ぬワニ』(著者:きくちゆうき 発行:小学館)

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ちょっと前に話題になった『100日後に死ぬワニ』ですが、買ってみて、読んでみて、「よかった!」と思いました。

 

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まず、俺のスタンスを明確にしておくと。

 

例えお金の匂いがするような商品展開があったとしても、それと作品の評価は別物と考えています。作品は作品で単体の価値があり、『100日後に死ぬワニ』の場合は100日間にわたってワニくんと友人たちとの交流を見守った日々という体験と、100日目にいきなり商魂たくましい怒涛の発表が相次いで興ざめしたことは、別物という認識です。音楽やっている人のアルバム(という商品)とライブ(という体験)は別物という考えかたに近いかも。もちろん、これは俺の認識であって、「『100日後に死ぬワニ』はライブこそが核だった!」という人もいるでしょうし、その価値観も否定しません。少し古い話になりますが、『電車男』はライブのほうがはるかに良かったしね。

 

で、

 

「28ページ追加とか言っていたけど新作は8ページしかない詐欺」とか言われていて、実際はそういう内容だったんだけど、俺はそこはそんなにマイナスポイントとは思いませんでした。

 

追加されているのは、ワニくんがいなくなった日常を生きる仲間たちの姿で、ワニくんのことを思い出したり、ワニくんの思い出に浸る暇もなかったり、“終わってしまったこと”にどうにか心の区切りをつくって、前に進んでいる姿が描かれています。そこに奇跡なんてまるでなくて、ただ恐ろしいまでのリアルしかありません。

 

100日間追ってきたワニくんの話は、単行本になるとすべて読むのに15分もかかりません。あっという間に読み終わってしまいます。お話が面白いかというと、面白いのですが「ふふっ」と笑ってしまうような微笑ましさなので、これは人によって賛否が分かれるところでしょう。

 

でも、ね。俺はこの作品の価値はそこじゃないと思っていて。ワニくんはきくちゆうきさんによって生み出されたキャラクターですけど、キティちゃんとか、ミッキーマウスとかとは違うと思うんですね。ワニというカタチをしていますけど、誰かにとっての大切な人がワニくんなんだと思うんです。

 

ワニくんは若い命の灯を消してしまいました。それは何の兆候もなく、あまりにも突然に。多くの人にとって、親しい人の死とはそういうものだと思います。でも、経験したことがないからこそ、普段、誰も想像しません。いつまでもいつもと同じような日が続くと思っています。でも、そうじゃないんですよね。

 

大切な人は、本当に急に、目の前からいなくなってしまうんです。その人がいた日常はあっけなく崩れ去り、二度と戻ってこない。それで物語は終わりかもしれませんが、生きている人たちは、それでもその悲しみを胸に抱いて生き続けなければならない。そういう大切なことをあらためて気づかせてくれたのが、『100日後に死ぬワニ』という作品なんだと俺は思います。

 

新型コロナウイルスによって、死は私たちの身近な存在になりました。俺はこの間、母がガンの手術をしましたが、ヘビースモーカーだったこともあり、感染したら重篤化するかもしれない、と言われていたほどです。二度と会えなくなる。そんな未来がみんなのすぐ近くにある。そんな時代だからこそ、日常の大切さを思い出すために、この本には価値があるんじゃないかと思いました。

 

あらためて読むと、ありふれた日常を描くために、細かいディティールにまでこだわっている作品です。そして、女性キャラのおしりが総じてエロい。

 

 



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