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【本のレビュー】『レトロゲームファクトリー』(著者:柳井政和 発行:新潮社)

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レトロゲームが好きな人には、条件付きですげえ楽しめる物語でした。

 

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どんなお話なのか?

タイトルにある「レトロゲームファクトリー」は、作中に登場するレトロゲームの移植を専門に行なっている零細企業の名前です。物語は、レトロゲームファクトリーの社長である兄貴肌の中年、灰江田(はいえだ)と、レトロゲームファクトリーに押しかけで社員になった20代でレトロゲーム大好きなスゴ腕プログラマー、白野高義(渾名:コーギー)の2人が、その昔、ファミコンで人気を博したとあるゲームプログラマーが手がけた一連のレトロゲームを最新機種に移植するにために、失踪した権利者を探すために当時何が起きたのかを探っていく…レトロゲームを題材にした一風変わったミステリーです。

 

生活描写にリアリティがある!

著者である柳井政和さんは、ゲームメーカーへの在籍経験があり、『めもりーくりーなー』といったPC用フリーソフトを多数開発し、プログラミング技術書の執筆もしている現役プログラマーであり小説家という方とのこと。そのため、業界あるあるや、社長1人でレトロゲーム移植を行なっている会社の状況描写がとてもリアルです。俺もゲーム業界に身を置いていた人間なので、社長同士が集まる「業界の飲み会」とか「あるある!」と笑いながら読みました。経営の大変さとかもリアルで、倒産を経験している身としては古傷が傷んだりもしましたけどね(笑)

 

プログラマーだからこそ書けるミステリー!

作品の中では、UGO(ユーゴー)の愛称で知られるプログラマーがかつて作った作品群に中に、探している権利者本人UGOが当時何を考えていたかを探るヒントがあるのではないかと、プログラミング内容を探り、その先にあるプログラマーの意図を汲み取ろうとする展開があります。

 

というのも、UGOブランドの最後のゲームは、「いつもとなんか違う」ということでファンからも評価が低かったのです。しかし、関係者から話を聞いていくと、そこには当時の開発者と経営者の意見の対立があり、部外者の作品への強制的な関与があったわけで(結構よくある話です笑)。商品化されたものには、ゲーム上では意図的に消されている部分がありました。そこで、コーギーこと白野くんは、過去作品のプログラムコードと比較しつつ、その謎に挑んでいきます。

 

このあたりで披露されるファミコンゲームの仕様についての知識は、UGOブランドは架空のものなのですが、本当にあってもおかしくないと思わせる技術的な解説がされており、レトロゲームファンとしてはなかなか楽しめるのではないでしょうか。

 

だが、問題点も

これは、作風の好みに関することかもしれないので、あくまでも俺が感じた感想であり、他の人からしたらそんなに気にならないことかも…という前提で聞いてください。

 

物語全体を読んでいての感想は、小説というよりゲームのシナリオでした。お話が淡々と進んでいくんですね、一定のスピードで。間とか、溜めとか、物語の疾走感はないわけではないのですが薄いです。加えて、登場人物も小説としてはキャラ立ちしていない印象。個性的ではあるのですが、それは物語を構成するための登場人物に与えられた記号みたいな個性しか感じられなくて、登場人物に愛着が湧いたり、頭の中で想像して勝手に動き出すようなことが、俺にはありませんでした。

 

最後に、これは完全に俺の問題でもあり特殊なのかもしれませんが、物語の展開に意外性がなかったですね。ほぼ予想した通りの展開で、次にこういうキャラが出てくるというのも、ミステリーの謎の部分も、俺の場合は先に予想してしまっていたので話を進めるのは答え合わせみたいな感じでした。

 

結論

ネガティブっぽいことも書いたのですが、俺が言いたいのは、本格ミステリーと思って読んでいくと期待ハズレになってしまう可能性があるということ。本作は、ちょっと失礼な言い方をすると、ライトなミステリーです。普段、あまり小説を読まないという人でもサクサク読める良さがあります。

 

そして最大の推しポイントは、レトロゲームを題材にしてレトロゲームファンを納得させるディティールがきちんと作られている(ヘンなツッコミを入れられる粗悪さがない、粗悪さによって冷めることがない)点でしょう。レトロゲームを題材にした作品は他にも多々ありますが、本作は「レトロゲームネタをとりあえず入れておけ」的な作品とは一線を画しており、作品単体で勝負できるクオリティがあります。

 

新型コロナ・ウィルス騒動で外出もままならないこんな時だからこそ、レトロゲームを題材にした探索ミステリーでもいかがでしょうか。

 

 



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