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人面犬に遭遇したときの話。

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大学生の時の話になりますが。友人が「近所に人面犬が出る」と言い出してですね。酒のチカラも手伝って、「だったら、見に行こうぜ!」という話になったのでした。

 

そもそもの話。健全な大学生らしく、彼女を作って、隣の席で授業を受けたり、「今夜お前んとこ泊まりに行っていい?」「やだもう。…いいよ」みたいなキャンパスライフを送っていれば、人面犬を探しに行く、なんて話にはならないわけですよ。なので、この話の悲劇とは、男子大学生が3人とも非モテで、「クリスマスは寂しいからみんなで集まってクリスマスパーティしようぜ」と言い出したところから、すでに始まっていたわけです。

ケーキを買って、チキンを買って、ビールを買って、友人Aの部屋に集まって、こたつに入って「メリークリスマス!」と祝い始めたのが午後8時。それから4時間くらいは、『バンパイアハンター』とか『X-MEN vs ストリートファイター』とか対戦格闘をやってそれなりに楽しかったのですが、0時をまわったあたりから、この会のこの場所に自分が身を置いていることがとても惨めになってきて。近所に住んでいる社会人の先輩の家に遊びに行こうって話になったんですね。酔っ払っていたので悪ノリですよ。

で、先輩の住んでいるマンションまで行きました。お酒とおつまみを持って。で、インターホンを鳴らそうと思ったら、部屋の中から何か聞こえるわけですよ。それが、まさしく、愛の営みのソレでして。しかも、女性のほうの反応がすさまじく良くてですね。下手なAVよりもエロくて。まあ、音も声も外まで聞こえちゃっているレベルで。なんというか、いたたまれなくなって。俺たちは先輩のマンションから静かに退散しました。

で、寒い深夜の公園で、ちびちびやっていたら。パーティ会場である部屋を貸してくれた友人が、「あっ」と何かを思い出したような声を上げ、「人面犬を見に行かねえか?」と言い出したのです。

勘のいい方は気がついていると思いますが、これは1990年代後半の話。人面犬ブームなんてとっくに過ぎ去っています。しかし、件の友人は言うのです。「人面犬はこの街にいる」と。

友人はこの話をバイト先のバーの先輩から聞いてそうで。ある高速道路の下を通っている道に、深夜になると人面犬が出る、というもの。本当にそれだけの話。

しかし、いろいろあって、落ち込んでいる気分を盛り上げたかった俺たちは、「行こうぜ!」「見に行こうぜ、人面犬!」と変な方向にテンションレバーが入ってしまったのでした。問題の高速道路下の道は15分くらいところ。さすがに深夜2時をまわった住宅街ですから、人なんて誰も通りません。静かなものです。到着した俺たちは、高速道路の下にあった遊具の影に隠れて、人面犬を待ったのです。

深夜。高速道路のオレンジの照明に周囲は照らされているものの、高速道路下はほとんど真っ暗。ダウンジャケットを着こんでいても、指先は冷えきり、吐く息は白い。でも、俺たちは静かにじっとしていました。声を出したら人面犬が気づいて近づいてこないかもしれませんから。じーっと、静かに、ただひたすらに。

どれくらい時間が過ぎたでしょうか。

クルマが近くの道を通りました。と思いきや、クルマは止まって、バタンとドアが開けられる音が。しばし静寂。その後、コツコツコツ…という足音と、ズサッズザッズザッ…という何か這いつくばる音が、頭上の高速道路の車の往来がなくなるわずかな間だけ聞こえました。暗くてよく見えません。しかし、何かがこの暗い公園に入ってきたのはたしかです。俺たちにも緊張が走ります。何か話し声が聞こえます。聞こえるのですが、頭上の高速道路に車が走っている音でかき消され、ほとんど聞こえません。しかし、神の奇跡か、悪魔の悪戯か、上下線の高速道路の車の往来がピタッと止まった瞬間、静寂になった暗闇の中で、以下のような会話が聞こえたのです。

 

 

 

「オラオラ、さっさと、オシッコを済ませるんだよ!」
「すびばぜんっ!ナツコ女王ざまっ!」 

 

 

 

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しばらく経って、遊具の影から抜け出した俺たち3人。そして誰かが言いました。「“犬”じゃなくて“豚”だったな」。

クリスマスイブの夜9時~深夜3時の6時間は日本中のカップルがそれぞれの愛のカタチを作っている性の6時間と呼ばれているそうですが、奇しくも俺たちは、少し変わった愛のプレイと遭遇してしまったのでした。

この年のクリスマスイブのイメージが強烈すぎてようで、俺たち3人のその後の人生に、少なからず影響を与えました。俺はその後、女王様に弟子入りしているという女の子と付き合うことになり、友人の1人はSMクラブでバイトをし始め、もう1人はちょっと長引いていて、あれからずっと“豚”をやっています。

何がどんなことに繋がるか分からないのが、人生の面白いところであり、人生の怖いところでもあるのでしょうね。

 



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