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「弱者のため」という正義をふりかざす人は、その正義のために無実の者に偽りの罪をつくる話。

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母の知り合いが、極悪非道な夫の罪を死ぬ間際にゆるすことができ、教会クラスタの人々は拍手喝さいの大賑わいで、母がこのウェーブに乗ってかって俺を入信させようとしているので、ぐんにゃりしています。

 

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東出昌大さんの不倫が、新型コロナウィルスと同等以上の破壊力をもって語られている今日この頃ですが、俺の身近でも不倫の話がありました。

母の知り合いの女性Aさんの夫が、長年にわたって不倫をしていたそうです。夫はもうすぐ70歳という年齢。お相手の女性Bさんは20代前半とのこと。すげえ。しかも、子どもまで作っていたそうで、その子どもは小学生になるのだとか。

これまでずっと、Aさんの夫はその20代の不倫相手の女性Bさんに毎月生活費を渡していたらしく、その存在は秘められていたのですが、最近、Aさん宅でいろいろ出費がかさむことが多かったため、Aさん夫は不倫相手のBさんに生活費を支払うことができなかったらしく、業を煮やしたBさんはAさん宅に訪問。それによって、Aさんが抱えていた「これまでずっと外に女がいるのではないか?」という疑惑は確信に変わり、世紀の大ゲンカが勃発したそうです。

そんな時、Aさんの夫が突然仕事先で倒れてしまいます。病院で診察を受けたところ、ある病気の最終ステージであり、先が長くないことが発覚しました。緊急入院です。

本来ならば、妻であるAさんは夫のそばに付き添うべき。しかし、Aさんはどうしてもそれができませんでした。長年信じ続けていた最愛の人に裏切られた。その思いが胸を渦巻き、どうしても夫のもとに行くことが出来なかったのです。そんな日々がひと月近く続いたある日、Aさんの息子さんが言いました。

「親父、そろそろ危ないって」

その言葉を聞いたAさんは、最愛の夫が死んでしまう、この世からいなくなってしまう、という事実の恐ろしさにようやく気がつき、取るものもとりあえず、病院に駆けつけたのだとか。夫はICUに入り、ほとんど意識がない状態。しかし、Aさんの姿を見かけると、Aさんに向かって手を伸ばしたそう。Aさんはその手をぎゅっと掴むと、本心を伝えたそうです。

「あなたのすべてを赦します」

夫は涙を流し、それからしばらく経って、息を引き取ったとのこと。

 

「彼女は、悲しみを乗り越えて、人間として1つ上のステージに行くことが出来た。これも日々の鍛錬の代物よ。どう、いい話でしょう?」

母は目をキラキラさせて俺に語りかけてきました。Aさんは教会でこの話をみんなに語ったところ、周囲の人たちは感動し、大粒の涙を流し、Aさんを讃えたそうです。母はこの深イイ話を俺に聞かせることで、俺も感動し、入信するだろうと浅はかなことを考えていると、顔に書いてありました。

 

結論から言いますが、これはイイ話ではありません。Aさんのいう夫の不倫は、すべてAさんの妄想なのです。

 

Aさんは非常に自己評価が高く、夫のことも非常に高く評価しています。Aさんの夫は、某有名大学卒で頭はいいのですが、社会適応に問題があったのか、職を転々として、最終的には埼玉県でタクシーの運転手をしていました。

Aさんの不幸は、大恋愛の末に結婚した夫のことを過大に評価していることと、自身が社会人として働いたことがないため世間知らずであることです。そのため、夫から渡される給与の低さに納得していませんでした。うちの夫は〇大卒なのに、こんなに給与が安いはずがない。でも、俺が聞いた給与額は埼玉県のタクシーなら妥当な金額でした。彼女は相場を知らないのです。

なぜ、ウチに入るお金が少ないのか。そう考えたAさんは浮気を考えました。なぜなら、夫は〇大卒のイケメンだから。ちょっかいを出してくる女はたくさんいるだろうと思ったようです。しかし、年齢70歳近く、ハゲちらかした頭のメタボ男性に惚れる20代女性が現実的にいるわけがありません。お金も持っていないし。ましてや子どもを作るほど許すとは考えにくい。でも、Aさんの中で夫の評価は高いので、これがまかり通ってしまうのでした。

Aさん宅に20代不倫女性Bさんが押しかけてきた話をしました。それもよく聞くとおかしな話で。AさんはBさんの姿を見ていないのです。外から夫とBさんが話している声を聞いただけ。何時間も何時間も話しているのだとか。それを裏付けるように、Aさんのご近所の人たちが、「昨日もAさんところに女が来ていて旦那さんが対応していた」「何時間も話していてうるさいったらありゃしない」と外で話しているのを、彼女は家で聞いているのです。

勘のいい方ならお分かりだと思いますが、統合失調症の方がよく聞く幻聴ですね。午前3時という深夜帯に20代の子持ちの女性がお金の無心のために何度も何度も埼玉県の家に押しかけるわけがないのです。このような矛盾点をつくと、Aさんは「みんな言っている」と答えますが、この“みんな”とは幻聴の人たちなのでした。

 

つまりこの話は、Aさんの妄想によって、ありもしない汚名を夫は着せられ、本人は試練を乗り越えたつもりで「罪を赦した」という、マッチポンプ寸劇以上でも以下でもない、というのが俺の感想でした。

そのことを母に話すと、「そういうものの捉え方をするお前は地獄に落ちる。人間とはそんな浅はかな生き物ではない。苦しい中で清廉な生き方をしている人たちもたくさんいる」と言います。

なるほど。たしかにそうかもしれません。しかし、事実は1つしかないですが、解釈は無数にあるもの。人は自分に都合のいい解釈をするものだし、歴史において勝利したものが語る正義とは、勝者にとって都合のいい解釈の1つにしかすぎないものなのです。「罪を正義が裁く」というストーリーのために、「裁くべき罪が必要になる」ことは往々にしてあり、人間という生き物は本来の相関関係を無視して、罪を創るために新しい相関関係を起用に無意識に創ってしまいます。

だからこそ、このような残酷な現実を受け止めつつ、人は知恵をつけていくべきだと俺は思うのですが、人は自分に都合のいい夢から覚めようとはしないもの。では、Aさん自身はそのつもりはないし、Aさんが苦しんでいることも事実なんだろうけど、そのために無実の罪を着せられているAさんの夫さんの名誉は、どうでもいいものでもありません。俺はそのあたりに憤りを感じながら、Aさん夫のご冥福を祈っています。

 



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