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【本のレビュー】『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』――実はドラゴンクエストXIに一番影響を与えているかもしれない作品!

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「勇者とは、血統ではない」ということに、早い段階で言及した作品といえるのではないでしょうか。

 

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ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』とは?

ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』は、原作・設定を博報堂のコピーライターという経歴を持ちエニックスの作品といろいろ関わりのあるSF作家川又千秋さん、脚本を小柳順治さん、画を藤原カムイ先生が担当した作品。1991年から1997年まで『月刊少年ガンガン』(エニックス、現・スクウェア・エニックス)で連載されていました。

 

俺と『ロトの紋章

月刊少年ガンガン』の創刊から読んでいました。俺の記憶によると、『月刊少年ガンガン』の創刊号ってヤバくて、「なんでこんな作品が商業誌に載っているんだよ!」という作品ばっかりだった記憶が。持ち込みマンガも全部載せてやるぜみたいなごった煮感があったような(当時のことを記憶だけで書いているので記憶違いもあると思う)。そんな漫画ばっかりだったら二度と読まなかったと思うのですが、その中で強烈に引きつけられた作品が、この『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』でだったのです。『月刊少年ガンガン』としても『ロトの紋章』は雑誌の牽引役として考えられていたようで、初回からページ数がハンパありませんでした。そして、すごく面白かったのです。そんなわけで、俺は『ロトの紋章』のためだけに『月刊少年ガンガン』を読み続け、最終回まで付き合ったのでした。

 

ロトの紋章』の設定のスゴさ

たぶん、原作者の川又千秋さんの功績だと思うのですが、作品としての設定がすごく細かいんです。

 

エニックスって、『月刊少年ガンガン』を出す前にドラゴンクエスト関連の書籍をいくつも出していました。『ドラゴンクエストIII 知られざる伝説』とか、『アイテム物語』とか、『モンスター物語』とか、そういうやつですね。これらの書籍は、ゲームの『ドラゴンクエスト』の本編では解説されていないさまざまなことを紹介している本(後付けの設定も多かったと思う)でした。例えば、勇者ロトが最終決戦に臨むときの武器防具り1つ、王者の剣がオリハルコンで作られていることはゲーム中で説明されていますが、他の素材としてブルーメタルやミスリルが存在していたとか。ドラクエIIIの世界に昔ムーと呼ばれる国があったけど神の怒りを買って滅びてしまい、その子孫がジパングの民だとか。そういう公式設定がたくさんあるんですよ。

 

ロトの紋章』では、そういった設定がかなり活かされているんですね。マンガ作品としてのオリジナル要素もたくさんあるのですが、基本的には原作準拠であり、『ロトの紋章』自体が新しい『知られざる伝説』という作風という感じ。こちとら、前述したドラクエ関連書籍はひと通り読んでいますから、その立場からすると、『ロトの紋章』はかなり「分かっている作品」なのでした。

 

個人的にグッときたのは、ゲーム中で「勇者ロトとともに戦った3人の賢者」と語られているドラクエIIIの主人公以外のパーティメンバーについての設定ですね。バランスを考えて、戦士と武闘家と賢者と設定して、「剣王」「拳王」「賢王」という設定にしたところでしょうか。彼らは、大魔王ゾーマが死に際に残した「新たな闇の存在が現れる」に備えるために、世界に危機が迫った時に再び子孫が集うことを約束していた…。うおおっ、グッとくる設定です。

 

また、ゲーム内で重要アイテムのくせにイマイチ存在感がなかった「聖なる守り」「ロトの印」について、タイトルに付くくらいの意味を持たせたことも良いですね。少しネタバレになりますが、ロトの印は3つに分解できて、その3つと所有者の聖なる心が1つになったとき、究極呪文オメガルーラを発動できるのです。しかし、このオメガルーラは対象物を宇宙のかなたに吹き飛ばす呪文であり、あくまで問題を先送りするだけ。「それではダメだ。完全に消滅させなければ意味がない」という結論にたどり着く、ロトの子孫たちの気高き精神を表してもいるんですね。

 

ロトの紋章』のストーリーのスゴさ

ロトの紋章』は、ゲーム版『ドラゴンクエストIII』と『ドラゴンクエストI』の間の物語です。大魔王ゾーマを倒した勇者ロトは、その後、2人の息子と1人の娘を設けました。息子のカーメンとローランはそれぞれ地上で王国を築き、娘のフローラは死んだとされるものの匿われてアレフガルドで生きていきます。この3人の子たちに、3つに分解されたロトの紋章が授けられるのでした。ゾーマ討伐から100年が経ち、世界は新たな危機を迎えます。謎の存在“異魔神(イマジン)”が、配下に何人もの魔王を従え、強力な軍隊を組織していたのです。異魔神は、かつて自分を宇宙のかなたに吹き飛ばした精霊ルビスのオメガルーラを警戒し、その発動条件であるロトの紋章とロトの血筋の排除を部下たちに命じます。

 

生まれたばかりのカーメンの王子は、魔物たちの関係によって呪われた名前を付けられそうになるものの、異変に気がついた家臣と王妃の命がけの抵抗により、本当の名前「アルス」が名づけられ、城外に脱出。異魔神は、今度はローラン城を襲い、生まれたばかりの王子に呪われた名前「ジャガン」を付け、自分の配下に収めることに成功する。一方、アルスと名付けられた赤子と、それを守る家臣タルキンとルナフレアは魔物の監視の届かない聖域に逃げ、アルスを育てていく。そして10年の月日が経った。世界は、異魔神によって少しずつ地獄へと姿を変えつつあった…。

 

ゲームの『ドラゴンクエスト』は、子供ども用のゲームとして生まれた経緯により、パッケージに書かれている主人公たちも子どもだったんですね。しかし、子どもが魔物だらけの世界を旅していくというのは、マンガ化したときに違和感がありすぎるため、説得力として、大人の家臣のサポートがある、といった追加設定が設けられています。また、ゲーム同様に、敵と戦って強くなる、という描写だけでは説得力が書けるため、蜃気楼の塔での修業期間といった要素を入れている点も、マンガとしてRPGを描くための工夫と思われます。

 

ロトの紋章』のマンガとして面白いところは、主人公アルスのライバルキャラとして、魔人王ジャガンを作った点でしょう。これは、『ドラゴンクエストIV』における主人公とデスピサロの関係と同じく、2人はコインの裏表というべき存在。「もしかしたら、僕がアイツになっていたかもしれない」という存在であり、敵と味方でガンダムが戦い合う的な展開もあります。みんなに愛されてきたアルスと修羅場をくぐってきたジャガンの初対決は必見です。アルスがジャガンにほぼ一方的にやられまくる。絶望的な恐怖に襲われ、泣くながら命乞いをするアルス。そんなアルスを見て高笑いしつつとどめを刺すジャガン。フツウの少年マンガでは見られない残酷な描写をやってのけるのは、さすが藤原カムイ先生です。

 

しかし、大切なのはここから。ジャガンに負け、自分の精神的な弱さを認めたアルスは、強さとは何かに気がつくのです。それは、親から受け継がれた才能でも、武器や防具でもない。心の強さこそが本当の強さなのだと。奇跡の復活を遂げ、仲間たちと鍛錬に励むアルスは、それまでの不安定さがなくなり、勇者と呼ぶにふさわしい顔つきへと変わっていきます。その一方、アルスが安定するにつれて不安定になっていくのがジャガンです。二度もの対決にアルスに完膚なきまでに敗れて以来、ジャガンは自分が信じていた強さ・正義が瓦解しはじめ苦悩します。そして、実の母から命を分け与えられ、自分に関わることで大切にしたい人たちが信じていくことに対して、初めて本心を口にします。「どうして、俺はいつもこうなんだ!」。ぶっちゃけ、アルスよりもジャガンのほうが人間的な魅力があります。

 

ロトの紋章』は、『ドラゴンクエスト』というゲームの面白さをいかにしてマンガにしていくかを模索し、成功している作品だと思います。同じドラクエのマンガ作品として『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』がありますが、あちらはドラゴンクエストのジャンプマンガ化には成功しているものの、RPGの醍醐味をマンガで表現しているという点では『ロトの紋章』に軍配が上がるでしょう(どちらにも違った良さがあるという意味)。主人公たちの段階的な成長を、苦悩、あがき、乗り越えるのくり返しと、旅の年数によって背丈が伸びるといった変化で、丁寧に描いています。そのため、最終決戦前の「あれからここまできた感」がハンパないのです。

 

ロトの紋章』とドラクエ11

双方のネタバレになるので明言は避けますが、『ロトの紋章』と『ドラゴンクエストXI』は類似点が多いです。ラスボスが宇宙から来た侵略者であり、肉体と精神を分解されて封印されている…といった点。魔王軍やパーティキャラクターの構成。一度挫折を味わってからの成長といった展開など。「パクリだ!」とは言いませんが、意識して作られたところはあるのではないでしょうか。

 

なぜ、今になって『ロトの紋章』なのか?

ウチの息子が、ドラクエが大好きなんですね。『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』が大好きで、片時も『大いなる神々の書』を手放さないくらい好きで。俺なんかよりもずっとやり込んでいるわけですよ。で、ドラクエの他のシリーズ作品にも興味が湧いたようで。『ライバルズ』を楽しむためにも、シリーズのにわか知識では臨みたくないと言っていて。そんなわけで、『ドラゴンクエストI』『ドラゴンクエストII』『ドラゴンクエストIII』をプレイさせたりしているのですが、どうも世界観がイメージしにくいみたいなんですよね。で、ビジュアル化の役に立てばと『ロトの紋章』を読ませてみたら大ハマリ。小学校の「将来なりたい職業」に大きく「勇者」と書くくらいハマってしまったので将来が心配です。

 

それはともかく、世代を超えて夢中にさせる名作『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』。気になった方はぜひ読んてみてください。Kindleでお手頃価格で手に入りますよ。

 

               

 



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