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【映画レビュー】『ターミネーター ニューフェイト』――『T2』に感動したものは見届けなければならない。サラ・コナーの魂の再生と救済の物語。

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イヤな予感はしていました。映画の出来ではなく、復帰したサラ・コナーが『T2』以降にたどった運命について。そして、その予感は当たってしまいました。今回はネタバレこそしませんが、ちょっとだけ話の構成にふれるレビューになります。

 

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ターミネーター ニューフェイト』のレビュー

時間改変を行なった者は、必ず代償を払うことになる。さまざまなSFで言及されているその運命から、サラ・コナーも逃れることはできませんでした。サラ、ジョン、ターミネーターT-800の活躍によって、未来において人類を支配するスカイネットは消滅することに。しかし、スカイネットは幾重にもジョン抹殺を企てており、あらゆる時代にジョン抹殺の指令を受けたターミネーターを送り込んでいた。その事実は時間改変によってスカイネットが消滅しても消えることはなく、サラとジョンは次々と送られてくるターミネーターと戦い続けなければならない日々を送らざるを得なかった。そして、そんな日々にやがて限界が訪れる。

 

悲惨。悲惨すぎるサラ・コナーの「その後」。俺は劇場で涙が止まりませんでした。本作のサラ・コナーは最高にカッコイイ登場をするのです。新たなヒロインであるダニー・ラモス、彼女を護衛する未来から来た強化兵士グレース。新たなターミネーターRev-9によってハイウェイで絶体絶命の危機に迎えたそのとき、颯爽と現れてRev-9を退ける。それはターミネーターとの戦いに慣れたベテラン戦士であり、まさに『T2』のサラ・コナーの未来の姿として圧倒的な説得力がありました。しかしそれは、サラ・コナーの一面でしかありません。彼女は深い悲しみに囚われていて、怒りをターミネーターにぶつけることでかろうじて心の均衡を保っていたのです。「事実を受け入れるしかない」とダニーに語るサラですが、サラ自身も事実をいまだに受け入れることができず、「浴びるほど酒を飲んで記憶をなくして寝る」ことしかできないのでした。アメリカの50の州で指名手配になって、かつてのように「人類の未来のため」ではなく、自分のために生きているサラ・コナー。ターミネーターと戦い続けなければ、これまで自分が捨ててきたもの、失ってきたものがすべて無駄になってしまう。そう、サラはいつの間にか、機械のように戦っていたのです。そんなギリギリのところで生きているサラ・コナーは、強い兵士でありながらも、1人の弱い女性として描かれており、俺は涙なくして観れませんでした。そんな心を機械化している彼女に人間らしさを取り戻させようとしている存在が「お前かよっ!」という人物であり、この物語の構造が分かっていると、ニンマリせずにはいられません。

 

で、全体的な感想なのですが、

 

本作はこれまで出てきたどの『T2』の続編よりも出来がよく、ジェームス・キャメロンの匂いがする作品でした。『T2』の正統続編は『ニューフェイト』しか考えられません。しかし、続編の神様といわれるジェームス・キャメロンをもってしても、神がかった『T2』は超えられなかった…という印象です。これはキャメロンがどうこうという話ではなく、『ターミネーター』という作品がキャメロンの手を離れて何度も続編が作られ、何度も追いかけっこを見てきたため、新鮮味がどうしても薄れてしまう、という問題のような気がします。

 

ジェームス・キャメロンの脚本の妙は、登場人物たちの<役割>を前作と変えることで生まれる化学反応を上手く利用するところだと俺は思っていて。その点でいうと、サラ・コナーとT-800の<役割>変更は、「今度はそう来たか、キャメロン!」というべき、なかなか熱いものがあります。

 

少しだけ物語の本筋に触れると、

 

『T2』では、<父親>のような役割となった改造T-800と、ジョン・コナーの心のふれあいが描かれていました。だからこそ、溶鉱炉でのラストシーンが熱いわけですが。そこに至る過程として、ターミネーターは「学習する」ということが描かれていました。『ニューフェイト』ではここが大きなポイントとなっています。これまで作られてきた『T2』の続編たちは「サラやジョンたちの頑張りによって、歴史は変えられても運命は変わらなかった」という物語だったのに対し、「サラやジョンたちの頑張りは無駄ではなかった。あれがあったからこそ、新しい未来に対抗する戦力が今ここに揃っている」という描かれ方をされているんですね。

 

ここまでまったく新キャラであるダニーとグレースについて語ってこなかったのですが。人が戦うには相応の理由が必要なんですよね。命をかける戦いならば、なおのこと。それは任務なんかではなく、魂が納得するもっと生きるということの根幹にある情動だと思います。本作はそれが描かれていました。一部のネットではダニーとグレースの百合映画なんて表層しかなぞっていない意見もありますが、これはそんな浅いものじゃない(百合は好きだが)。「生きる」っていうものは、身体的な意味と精神的な意味があって、命を賭す価値を見出した戦いが今回の『ニューフェイト』では描かれています。グレースが何度もオーバーヒートを起こしながらも、注射を打って、限界を超えてダニーを守る姿には、そういう意味があるのです。これこそ、「機械」に対しての「人間」の戦い方であり、初代『ターミネーター』では描けなかった宿題を本作で実現した、と俺は解釈しました。

 

たぶん、カットされたシーンがたくさんあると想定される『ターミネーター ニューフェイト』。気が早いのは十分承知ですが、未公開シーンも付け加えた完全版の登場を俺はとても楽しみにしています。

 

       

 



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