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【本のレビュー】『迷廊館のチャナ1巻』――ワルキューレの冒険&伝説の世界観を創った冨士宏先生の不思議の国のアリス風味を楽しむ作品。

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チャナ、良いですよ。

 

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チャナが復活!!

『迷廊館のチャナ』は、20年以上前にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)の広報誌『NG』に連載されていた作品です。

 

探検家に憧れる少女チャナが屋敷で見つけた「カギ」。そのカギは、敷地内にある建物が全壊してしまっているにもかかわらず、1面だけ残された壁にある扉を開けるためのカギだった。扉を開けなくても、他の壁が壊れているから建物の中には入れる。でも、「扉を開けて進むことに意義がある!」とチャナはカギをまわして扉を開ける。

 

そこは知っている景色が広がっているはずだったが、なんと見知らぬ屋敷内へとつながってしまう。そこは迷廊館。ところが入ってきたはずの扉が消えている。どうすればここから出られる? 屋敷の中で知り合っ有翼人オルオルのチカラを借りて、なんとか迷廊館から脱出するチャナ。

 

探検家を志すものの、もう地球上には前人未到の地はないと思っていた。しかし、自分のすぐ近くに、世界中の誰も知らない未知の地域が存在する。チャナは、その存在を人々に知らしめるために、迷廊館を探検することを決意するのでした。しかし、迷廊館の中にはいろいろな人たちが住んでいて、そこそこ幸せな営みを送っている。そして、役割と階級が設けられており、現実世界と同様の悩みや葛藤もあるのでした。チャナは、盗まれたカメラを取り返すために迷廊館に深く入り込み、迷廊館の深淵にふれていくことに…といったストーリー。

 

面白さが伝わりにくい作品

正直な話をすると、広報誌『NG』に載っていたときの『迷廊館のチャナ』を、同時の俺は一度も面白いと思ったことがありませんでした。なんというか、プロの漫画って感じがしなくて。大学の漫研の会報誌に載っているような作品だったんですね。作品として独特の味(俺は好きだよみたいな)はあるんだけど、1話の終わり方として引きが弱いし、ギャグが面白いわけでもない。もっと続きが読みたくなるというわけでもない。かつての『迷廊館のチャナ』はそういう作品でした。

 

で、

 

あれから25年の月日が経って、プロの漫画家として成熟された冨士宏先生によるセルフリメイク版の『迷廊館のチャナ』はどうなのか。かつての学漫らしさは消え失せ、きちんと伝えるべきテーマが伝わりやすいように、コマ割りや構成が組み立てられ、かなり洗練された印象を受けました。そして、冨士宏先生が何を描きたいのかが、とても分かりやすくなってきたという印象があります。

 

それでも、『迷廊館のチャナ』の面白さは伝わりにくい。つまらない、という意味ではありません。面白いんだけど、その面白さの言語化が難しいというか…。どう伝えるべきか考えたのですが、『迷廊館のチャナ』を読者はどうやって楽しむべきなのか、という軸で話したほうが分かりやすい「答え」が書けるかなーと思い、以下はそんな感じで書いていきます。

 

あくまでも、俺の個人的な感想ですが。『迷廊館のチャナ』の面白さは、「冨士宏先生ワールドをのぞかせてもらうこと」じゃないかと思っています。

 

冨士宏先生は、以前、ナムコに在籍されていた頃、『バベルの塔』『トイポップ』『スカイキッド』『ワルキューレの冒険』『ワルキューレの伝説』などのキャラクターデザインやコンセプトアートを担当されました。たしかゲーメストの別冊ムック『ギャルズアイランド』で見た資料の中で、冨士宏先生は『ワルキューレの伝説』の敵や登場人物や冒険の舞台について、細かくいろいろなことを書かれていたと記憶しています。なので、『ワルキューレの伝説』の素晴らしい世界観の大元を作られたのはやっぱり冨士宏先生だと俺は思っていて。冨士宏先生の魅力は、細かいところまで考え抜かれた「やさしいファンタジー世界観」だと思うわけで。

 

つまり、何が言いたいかというと。

 

『迷廊館のチャナ』は冨士宏先生の生み出した「やさしいファンタジー世界観」をどっぷり浸かれる作品であり、若き日の冨士宏先生が生み出した物語を、今の熟練した冨士宏先生が語り継ぐ作品でもあるわけです。

 

物語の着想や構成にルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に似たものを感じていて、物語の先が読めない、登場するキヤラクターたちの幸せを願いたくなる、そんな物語という印象を抱きました。たしかに人を選ぶ一面はあるかもしれません。しかし、『ワルキューレの冒険』『ワルキューレの伝説』などの世界観が好きな方なら、『迷廊館のチャナ』には同じ躍動を感じられるんじゃないかと思います。なかなかない雰囲気の作品だと思いますよ。

 

 

   

 



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