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ブラック企業なんて存在しない。ブラック経営者がいるだけって話。

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やべぇ会社があったんですよ。

 

 

 

 

その会社が「やべぇ」ということは、社長室に入った瞬間に分かりました。

これは今から5~6年くらい前の話なのですが、俺はとある企業のプロモーションの仕事を引き受けていて、その打ち合わせのためにその会社にうかがったのです。ガチャリと扉を開けて「失礼します!」と社長室に入った俺たちの目に最初に入ってきたのは、浴衣を着て、社長室の床に正座している3人の美女たちでした。「ようこそ、お越しくださいました」。その3人が声を揃えて、三つ指ついてお辞儀をします。こんな光景はソープランドでしか見たことがありません。

 

社長は、白髪交じりの短髪で、すごく肌は焼けていて、シャツは前を大きくはだけていて、首には金色のネックレスをいくつかぶら下げていて、すべての指に金色の指輪をしていました。「悪いね。今日は来てもらっちゃって、さ」。ニカッという笑顔はとても爽やかです。目は笑っていませんでしたが。

 

場を和ませるアイスブレイクと思ったのか、同行していた営業さんが、3忍の美女たちをさして、「あの、この方たちは?」と聞くと、社長はニカッと笑って、「まあ、気にするな!」と言いました。空気を読んだ感じだと、「お前には関係ねえだろ」とおっしゃっていました。アイスブレイクどころか、こちらがブレイク(石化)したところからの打ち合わせでしたね。

 

「彼女たちは、"社長秘書"なんです」

 

しばらく経ってから、仕事で何度か顔を合わせていた採用担当の女性と、外でランチミーティングをする機会があり、あの美女たちの正体を教えてもらいました。そして、その会社の求人広告を見せてもらったのですが、「社長秘書」はいまだに募集中とのこと。ところが、その求人票の仕事内容の項目に、あまり求人票では見ないフレーズがあったんですね。「社長の身の回りのお世話」。これって、どういうことですか?とアイコンタクトを送ると、「ご想像の通りです。社長の愛人ってことです」と、教えてくれました。

 

求人票では、「月給25万円以上」と書かれていましたが、それは人を集めるために釣るための数字で。実際は、その2~3倍はもらっているとのこと。さらに、マンションまで用意してもらえるとか。もちろん、社長の身の回りのお世話というものは発生するのですが、それさえ仕事と割り切ってしまえば、いい稼ぎの仕事なのだという。風俗でもありませんしね、と採用担当の女性。どうしてこの人は裏事情に詳しいんだろうと思っていたら、俺の考えを見透かしたのか、彼女が言いました。「実は私、元・社長秘書なんですよ」。

 

社長の怒りを買うことがあって、社長秘書から"降格"したのだとか。それでも、普通の会社よりずっといいお金をもらっているそう。「ウチの会社はブラックですよ。社長によるパワハラ、セクハラが日常茶飯事。社長の思い付きの仕事のせいで、サービス残業や休日出勤が発生することが当たり前。エンジニアたちなんか、1週間くらい家に帰れないこともある。それでも、みんな辞めないんです。なぜだか分かりますか?」。彼女は俺の目を見つめ返してくる。「それは、給与が高いから」。

 

そのあと、彼女がつづけた言葉がとても印象的でした。

 

ブラック企業なんてものは存在しないんです。いるのは、ブラック経営者だけ。もし、ブラック企業というものがあるとするならば、ブラック経営者の元から離れない従業員である私たちのことなんですよ。社員がいなくなれば、社長は無茶なんてできなくなるんですから。社員がいて、会社がまわってしまっていることは、ブラック経営者を支えて、肯定していることと同じなんですよ」

 

だから私も、この仕事を最後に会社辞めるんです。彼女はそう言って、今まで一番、生命力を感じる笑顔になりました。

 

あれから月日が経って。ふと、思い出したので、あの会社が存続しているか調べてみました。まだ、存続しているようですね。社長室の床に浴衣美女たちが座っているのかどうか、そこまではわかりませんでしたが。