ほぼ日刊レトロゲームレイダース

おすすめエンタメ情報&笑い話を発信





?



【本のレビュー】『君の膵臓をたべたい』――猟奇的ともいえるこのタイトルに、読み終わった後きっと泣く。

f:id:retrogameraiders:20190712181845j:plain

四月は君の嘘』と往年のkey作品を足して2で割ったみたいな感じ。自分から積極的に動かない草食系オタク男子の夢を叶えたような、気持ち悪さを感じる人もいるかも(俺は好きだけど)。感動作として過大な期待はせず、そこそこの期待度で読むと、ブワッと来ますよ。

 

 

 

デジャヴ感のある設定、嫌いじゃないオリジナル要素

友だちも作らずいつも1人でいる男子高校生、「僕」。彼はひょんなことからクラスの人気者の女子・山内桜良の闘病の記録「共病文庫」を見てしまい、彼女が膵臓の病気によって余命いくばくもない事実を知ってしまう。

 

「最後までみんなとはフツウのまま接していたい」という桜良の願いから、ヒミツを共有することになった2人。「残された時間を有意義に使いなよ」という「僕」の忠告を聞いて、桜良は死ぬまでにやっておきたいことリストを作り、ヒミツを知っている「僕」を連れまわし、いろいろな思い出をつくっていく。

 

クラスのさえない男子と人気者の女子が2人でいることで、クラスではいろいろな噂が立っていく。そのことを迷惑と思っていた「僕」だったが、2人でいる時間が長くなるにつれて、桜良が本当は死ぬことの恐怖と一生懸命戦っていることを知り、少しでも力になってあげたいと思うようになる。

 

他人との干渉をしないと決めていた「僕」が、誰かのために積極的に干渉しはじめたことで、2人の関係は少しずつ変わっていく。それは恋なんて言葉で表せる単純な感情ではなくて。もっと違う2人だけのためにある言葉になっていない感情。「僕」にとって桜良が特別な存在になってきたある日、桜良は逝く。

 

こんな感じの物語。

 

本作のキモは、物語の終盤で「僕」が桜良に感謝の気持ちを伝えようとして、「君の膵臓をたべたい」とメールで送ったところであり(なぜこのような文面を送ったかはこの作品を読んでほしい)、その意図を考えると本作はラブストーリーではないのでしょう。そうとも受け取れるのですが。ここが、よくある女の子が死んじゃう系物語との差別化ポイント、オリジナル要素です。

 

いい話ですよ。俺も嫌いじゃないです。

 

ただし、説得力が弱い。桜良が「僕」のことを気にしている理由が、あまりにも弱すぎる。ここが弱いせいで、自分から積極的に動かない草食系オタク男子が積極的な女の子に振り回されて「やれやれ…」と思いながら楽しい日々を送るライトノベルから、次のステージに行けなかった感はあります。惜しい。すごく惜しい。

 

とはいえ、

 

桜良ちゃんを嫌いな男子なんてこの世の中にはいないと思いますし、桜良ちゃんと100ページ以上にわたって楽しい日常を送ってきたら、そりゃ、死んじゃったら泣きますよ。意図的に主人公の名前が隠されていて「僕」になっているからゲームみたいに感情移入もしちゃいますからね。泣ける。男泣きできる。うおおんと泣ける。気持ちよく泣ける話を求めているときに、ちょうどいい作品なんじゃないでしょうか。マンガ版・アニメ版の『四月は君の嘘』が好きな人は間違いなく気に入ると思います。

 

ちなみに、実写映画版は波辺美波さんがとてもいい感じなのですが、作品としては重要なところが改変されており、『世界の中心で愛をさけぶ』みたいな構成になっていたりして、別モノとして観たほうがいいですよ。