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多摩川を越えると1つの恋が終わる話。

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先日、悪友と相席居酒屋に行ったとき、相席になった女の子二人組から聞いた話です。その二人の片方の女の子が最近彼氏と別れたそうで、その元カレの話を聞くことになりました。その話がなかなかすさまじく、また学びのある内容でもあり、俺は彼女を応援したいと思ったので、少し内容にフェイクを入れつつ、そのお話を紹介したいと思います。

 

 

 

イケメン実業家、28歳、身長180センチ

ユキがそのイケメンと出会ったのは、とある異業種交流会だったという。ユキはとあるWebサービスの営業担当としてその会に参加。名刺交換が目的だったが、そのイケメンと出会った瞬間、恋に落ちたそうな。なんとかそのイケメンと名刺を交換しなければと思っていたら、そのイケメンのほうから声をかけられ、名刺を交換。しかもその名刺は、他の人に渡す名刺とは違い、個人の連絡先が書いてあるもので、ユキは「これは…!」と盛り上がった。

 

翌日、ユキが渡した名刺に書いてあった社用メールアドレスにイケメンから連絡があった。ドキドキしてメールを開くと、それは彼のセミナーへの招待メール。ちょっとガッカリしたものの、ユキは土曜に開催されるそのセミナーに参加してみることに。セミナーのテーマはキャリア教育。日本の子どもは仕事に対する知識を何も得ないまま中学3年生になって進路選択を迫られる。そんな状況でいい人生の選択ができるとは思えない。小さいころから、世の中にはどんな仕事があるのか、どういうキャリアを進んでいくのがいいか、知る機会、学ぶ機会が必要だ。そんな内容だったという。

 

ユキは、自身の経験から彼が壇上で語る内容に感銘を受け、懇親会でお酒を飲みすぎて、イケメンと方向が一緒だったということで同じタクシーで帰り、結論からいうと、その夜のうちにキスを奪われる。「韓流ドラマのヒロインになった気分…」と、ますますイケメンのことが好きになったと語る。

 

その後、連絡が来て、ユキはイケメンとデートすることに。場所は、とある水族館。近くにラブホテルがあることを調べたユキは、「今日、進展があってもいいように」と勝負下着を着替えてデートにのぞむ。ところが、その日、進展はなかった。それどころか、夕食のために入ったレストランでイケメンはユキに相談をしてくる。「実は彼女がメンヘラなんだよね」。その彼女のことを相談したくて、ユキをデートに誘ったのだという。

 

は? 何、言ってんだコイツ? というか、彼女いるのにほかの女とデートしてんじゃねーよ。相談に乗ってほしい? 知らねーよ。期待させやがって。ふざけんな。というかこの日のために買った下着78900円(上下)はどうしてくれるんだよ。

 

と思ったそうだが、イケメンはとある会社の社長。しかも、アタマが良くて、イケメン。結婚願望の高いユキは、営業現場で培ったマイナス地点からでも足跡を残し、後々のプラス方向への転換を狙って、「ここは相談役になって、次につなげたほうが得だ」と考えたという。ユキいわく、会社員で終わる男と会社を背負う男とは生涯収入がまったく異なり、選んだ男の収入は女を不幸にはしないとのこと。そのため、ひさびさに舞い込んだこの優良物件をモノにするために、いざとなったら自身がケモノになって、前の彼氏に仕込まれた口撃のテクニックで骨抜きにする算段も立てていたというから恐ろしい。

 

イケメンいわく。彼はメンヘラ女子ばかりを引いてしまうのだそうだ。今の彼女も、前の彼女も、その前の彼女も、メンヘラだったという。とにかく束縛が激しく、頻繁にメールばかり打ってくる。返信をしないと、会社の玄関やマンションのエントランスで待ち伏せしていることもあったとか。ユキは、「イケメンくんが優しすぎるからだよ」と適当にフォロー。その結果、「今日は相談に乗ってくれてありがとう。ヨキさんが彼女だったらよかったのに」というセリフまでいただき、ユキは心の中でガッツポーズを取ったそうだ。

 

そんなデートが何回か続いた。何回も続いてしまった。なんで何回もデートが続くんだよ。この男、自分から動かないつもりだな。そう考えたユキは、「しょうがないな。恋愛経験の少ない草食系くんは。おねーさんから動いてあげるぞ」と、一石を投じることにする。

 

「気づいていると思うけど、私、イケメンくんのことが好き。だから、イケメンくんが彼女がいる状態で、こうやってデートしているのが耐えられない。私のことを大切に考えてくれていて、彼女と別れたいというのが本心だったら、彼女と別れて私とちゃんと付き合って」。

 

賭け、ともいえる一手。しかし、ユキには勝算があった。この男は、間違いなく私になびくと。イケメンからの返答は、「彼女はメンヘラだから、ちょっと揉めるかもしれないけど、ユキさんのことは大切に考えているから、きちんと関係を清算する。だから少し待っていてほしい」。ユキは、「うん、待ってる」と、かわいく見えるように涙ぐみながらうなづいたが、頭の中ではリンゴーンリンゴーンと祝福の鐘が鳴り、『ゼクシィ』の表紙のようにウェディングドレスを着ている自分を想像していたそうな。

 

で、2週間だった。

 

イケメンから連絡が来ない。どんだけ時間かかってんだ。つか、どれだけ人を待たせるんだ。いや、違う。相手はメンヘラ女。別れ話をした途端、豹変してイケメンくんを攻撃したり、ひょっとしたら自殺をほのめかしたりしているのかも。ユキはイケメンに電話する。大丈夫かな、イケメンくん。トゥルルトゥルル…ガチャ。「やあ、ユキちゃん。どうしたの?」。無事そう、よかったー。心配したんだよ。例の話って、彼女さんに、した? 「…いや、まだしていない」。 え、どうして。もう、あれからだいぶ時間が経っているよ。「いや、ちょっと仕事のほうがドタバタしていて…」。 優先順位が低いな。こうなったら…。そう考えたユキは、イケメンを呼び出し、そのままホテルに行き、エッチをする。「ちゃんと、彼女に言うよ」。 その2日後、イケメンくんから彼女と別れたという連絡が入り、ユキは晴れてイケメンくんの本物の彼女になることができたのだった。

 

が、付き合ってすぐ、ユキはイケメンに不満を覚える。

 

LINEのレスポンスが遅すぎる。即レスなんて期待していない。半日、1日後、遅くても2日後に、レスをくれればいい。しかし、イケメンのレスは、基本的に3~5日後。しかもその間、Facebookのほうで、いろいろな投稿をしているので、時間がないというわけではないことは分かっている。

 

デートの内容にも不満があった。彼とのデートは基本、家。どこに出かけることもなく、どちらかの家で、マンガを読んだり、DVDを観たり、エッチしたり。それだけ。お金をかけて遊びに行きたいわけじゃない。ちょっと二人出てかけて、散歩するといった経験を共有したい。そんなユキの思いは、「俺、外出嫌いなんだよね」というひと言で流れてしまった。

 

エッチにも不満があった。小さい。アレが小さい。そして、自分勝手。1人で忙しなく動いて、1人で終わって、1人で寝てしまう。ユキは自分が汗1つかかないエッチに驚きを隠せなかったという。前の彼氏に開発されまくった全身がまったく納得していない。しかし、ウェディングの夢のため、ユキは我慢した。

 

そんな2人が付き合って6ヵ月経ったある日。ついに、決定的なことが起きる。それは、ユキが計画した日帰り小旅行だった。

 

「外出が嫌い」というイケメンに楽しい思い出を作って、「外出もいいね」と思わせられればいいなーという思いつきだったという。日帰り旅行だから「朝早く出たいから今夜は泊まりに来て」とイケメンくんを部屋に泊まらせた。例の感じのエッチがあった。予定では起きるのは6時。何度も起こすがイケメンくんがようやく起きたのが12時。6時間遅れたが、意地でも出発したそうな。

 

古都の街を散歩。いろいろ話しかけるが、気のきいた返事なし。しかも、ずっとつまらなそうにしている。だんだん腹が立ったユキは、話しかけるのをやめる。無言のまま、ひたすら歩き続ける2人。謝ろうともしてこない。さらに腹が立つ。しかし、このままだと本当に最悪な1日になってしまう。ユキは一計を案じ、古都から少し離れた半島で「夕陽を見よう」と提案。ガイドブックにも書いてある鉄板のデートスポットだ。イケメンの返答はいかに。「東京に帰るに1票」。そのまま、トボトボと駅に向かい始める。

 

は!? 帰るに1票。私反対意見出しているから同率投票なんですけど? それになんだ、帰るに1票って。帰ること決定してるじゃねえか。お前の1票は何票分の価値があるんだ。

 

イケメンくんは、駅につくと、切符売り場のブザーを鳴らして駅員さんを呼び出し、「新宿って、どう帰ればいいんですか?」と聞き始める、そこにユキが切れた。そんなもん、路線図見れば分かるだろうが。子どもか。

 

電車が来て、無言で乗る2人。ゴトンゴトン…。電車のゆれる音だけが響く時間が、ずっとずっと続いていく。イライラが頂点に達したユキは、イケメンに話しかける。「ねえ、なんか、言うことないの?」。沈黙。しばし沈黙。さらに沈黙。耐えかねたユキが言う。「ねえ、聞いているでしょ?」。ようやく口を開いたイケメンくん。「だから、遠出はいやだって、最初から言ってるだろ…」。そこじゃねえ。カッチーンときたユキは車内でイケメンに噛みついた。「遠出って、東京から神奈川県でしょ。どこが遠出なのよ。あなたのいう遠出ってどこからが遠出なのよ!」。めちゃくちゃなことを言っているが感情が高ぶっていたからだとユキは後に語っている。イケメンくんの返答。

 

「俺は、多摩川を越えたら、“遠出”って決めている」。

 

これを聞いた瞬間、ユキの中でイケメンくんに対する思いが、まるで波が引くかのように急速に冷えていったそうな。「恋が冷めた瞬間を自覚した」という。

 

恋の魔法が解けたことで、今まで見えなかったことが急に見えるようになってきたという。それは驚くべきことに、まるで走馬灯のように。一気にいろいろな記憶が流れ込んできた感じだったとか。

 

そういえば、コイツ、何かにつけて「母さんはこうやっていた」とか「母さんはそんなこと言わない」とか言ってたな。ただのマザコンじゃねえか。思い返せば、デートのときに一度もエスコートできてなかったな、コイツ。そういえば、いつしか私が立て替えたアイスクリーム代まだ払ってもらってねえぞ。学生たちに「社会人は早いレスポンスを心がけること」とか教えているお前のレスポンスが遅いじゃねえか。お前が早いのイくときだけだぞ…などなど。

 

後日、イケメンくんとユキは別れることになるのだが。本当は会って話がしたいと思っていたそうですが、イケメンくんが「仕事が忙しい」というので、電話で話をすることに。その電話もつながらず、ようやくつながったと思ったら「5分後にかけ直す」と言って2日間音沙汰なし。ここにきてユキは、イケメンくんが面倒なことから逃げる癖があることにようやく気がついた。レスポンスが遅いのは、イケメンくんにとって女子との連絡行為はただの面倒くさいことだったのだ。

 

そして運命とは皮肉なものと思える出来事が起きる。ユキが職場で指導に当たっている後輩の女の子から相談を受けることになったのだが。合コンで知り合った彼女持ちの実業家からデートに誘われているという。この話の流れから予想がつくと思いますが、「この人です」と見せられた写メには、イケメンくんのさわやか笑顔が写っていた。しかし、すべてを知ったユキには、その笑顔はただのアホ面。「なんでもメールの催促ばかりしてくる束縛の強いメンヘラの彼女がいるらしくって…」。この後輩の言葉を聞いて、「あっ、そういうことか!」と、パーツが組み合ってスッキリするとともに、「なに、私のことをメンヘラ扱いしてんだよ!」と怒りの導火線に火が付いたという。

 

電話での別れ話。最後だから「お互いに本当のことを言おう」ということになった。イケメンくんはこう語った。

 

「君の束縛がつらかった。言えば怒られると思ったから言わなかったけど、別に連絡を取り合ったりしなくていいじゃん。時間がもったいないと思っちゃうんだよね。俺がそばにいてほしいと思う時だけ来てくれて、そうじゃないときは連絡してこない。そういう関係になりたかった。君にはその素質があると思ったのに残念だよ」

 

それ、ただのセフレじゃん。と、ユキはカチーンと思ったそうだが、必死に怒りを抑えて、冷静に「チン○ンが小さくてマザコンだと思う」ことを伝えたそうな。

 

で、今に至るという。

 

ユキは泣いていた。鼻水を流しながら泣いていた。涙のわけは、自分でもよく分からないという。ただ、今は泣きたい。誰かに話を聞いてほしい。そして、早く結婚したい。そう叫んで、ひときわ大きな声で鳴いていた。俺と悪友とユキの友達は、「今夜は飲もう」とその夜オールしたのでした。

 

結婚の夢をかなえるために闘いつづける不屈の闘士――婚斗羅コントラ)がここにもまた1人。ユキさんには、ぜひとも幸せになってもらいたいと心の底から思いました。