「運動会に行きたくない」と、小学生の息子が言うんですよ。理由を聞くと、「学校でいじめられているから」だとか。「それは穏やかじゃないな」と思って詳しく聞いてみると、どうも事情が込みあっている。息子がドラクエ9のパーティにクラスの女子の名前を付けたキャラを作って加えているのが同級生にバレて、クラスで言いふらされて、女子から「キモい」と言われているらしいんですよね。
弱き心は、時を超えて
小学生の息子のドラクエ9。主人公に自分の名前をつけて、パーティ3人にはクラスの女子の名前をつけていた。
— レトロゲームレイダー/ジョーンズ (@game_raiders) 2019年5月19日
同級生男子にバレて、クラス中に広まり、女子から「キモい」といわれているらしい。
しかし、安心しろ、息子よ。
父さんはドラクエ3で同じことやって、同じ目にあっているから。
俺が昔、ファミコンの『ドラゴンクエストIII』で行なった禁じられた遊びを、31年の時を経て息子が行なうとは。血は争えないものですね。
「もう学校に行けない!」と泣いている息子に対して、「どうしてクラスの女の子たちの名前をつけたの?好きなの?」と面白がって聞くウチ奥さん。ええい、やめろ。これはそういうのじゃないんだ。もっとプラトニックなものなんだよ、と俺は声を大にして言いたい。
そう、好きとか、嫌いとか、最初に言い出したのは誰なのかしら。そうではないのだ。これは、運動会のフォークダンス的な楽しみなのです。フツウに男子小学生をしていれば、女の子と関わることなんてあまりなくて。でも、男の子の遺伝子には、女の子を守りたい、頼られたい、といった思いがあって。誰しもが、コナンになりたいんですよ。名探偵ではなく、アーノルド・シュワルツェネッガーでもなく、未来少年コナンにです。そういう気持ちを叶えてくれるのが、コンピュータゲームであり、RPGなのではないでしょうか。
クラスではほとんどしゃべることのないけど、ちょっとだけ気になっている女の子と、放課後のニンテンドーDSの中では、もう何十時間もいっしょの旅をつづけている。そこがいいんじゃないかと、俺は思うわけです。
これは、最高に楽しいんですよ。とてもじゃないけど、自分の胸の内にだけしまっておけないおけない楽しさなんですよ。だから、つい、うっかり、クラスの仲のいい男子生徒に、「みんなにはナイショだよ」と洩らしてしまうのが、男子小学生という生き物なのです。しかし、男子小学生という生き物は基本的にバカなので、「面白いこと=即シェア」となり、瞬く間に「ここだけの秘密だけど…」をくり返し、クラスの男子に広まって、やがて女子の耳にも入ってしまったのでしょう。
女子小学生は男子小学生の3倍能力が高いため(だからランドセルも赤が多い)、思考回路もハイスペックでマセているため、すぐに恋愛関係に絡めてしまう。これがイケメン男子小学生が震源地なら「キャー☆彡」という話題になるのですが、フツウの男子小学生の場合「ギャーーー」になってしまうわけで。悲劇は起きてしまうわけです。
何が言いたいかというと、男の子が、RPGにおいてクラスの女子の名前をつけたキャラを作ってパーティに加えるという遊びは、恋愛感情とか抜きにした純度の高いものだと思っていて、それは人生においてある一時期しかない貴重なものであると同時に、こっそり同級生に教えて、裏切られてバラされてしまうというイベントもこの時期に必然なこと。
人生というRPGにおいて、後からだと回収が不可能なイベントだと思うので、息子にとっては悲劇ですが、いつか笑い話にできる日が来るわけですし、人は落ちることで這い上がることを覚えるもの。今こそ、小さなウチの勇者には今こそ立ち上がってほしいと思う今日この頃です。