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MSX――それは時代の名前、という話。

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「しあわせな時間」は、どんな人間にも存在していたものだし、しているものだ。俺にとってそれは何時だったかを考えると、現役でMSXにふれていたあの頃ではないかと思います。MSX、それはその昔存在した低価格帯のパソコン規格であり、プロの作ったゲームと自分がプログラムを打って作ったゲームが、同じところにあることを強く感じられたパソコンでした。

 

 

ファミコンを卒業してMSX

小学校5年生のとき、俺はファミコンを卒業させられることになりました。理由は視力が落ちたからです。母親はその原因をファミコンのせいだと決めつけました。高橋名人の言いつけを守って、1日1時間しかゲームをしていなかった俺がファミコンによって視力を落とすはずがありません。本当は、裸眼で太陽を見ようとしたり、いろいろヤンチャしたことが原因だったと思うのですが、メガネをかけることになった俺は、その代償としてファミコンを失ったのです。

 

しかし、いつまでも地下でくすぶっている俺じゃあない。ゲームさえできれば、どんな無茶でもやり遂げてしまう命知らず。不可能を可能にし、強力な親さえも手玉に取る。それがレトロゲームレイダーである。

 

俺は、これからの時代に求められる学習の一環として、MSXを親から買ってもらうことに成功するのでした。目が悪くなったからとファミコンをやめさせられたのに、パソコンを買ってくれる親の行動には一貫性がありません。しかし俺は、「視力が落ちたから」というのは建前で、親の本音は「中学を目前にしていつまでもゲームばかりやらせておきたくない」であることを見抜いており、その心理を逆手にとって、ファミコンの3倍以上の値段がするMSXを買ってもらったのでした。

 

正確に言うと、俺が買ってもらったのは「MSX2+(エムエスエックス ツープラス)」というやつで、MSXの上位互換機MSX2のさらにパワーアップさせたやつです。FM音源が最初から内蔵されていました。ガンダムのMSに例えると、グフ・カスタム(ノリス専用機)みたいな。

 

MSXは当時いろいろ発売されていたパソコンの中では、もっとも安く低スペックなもので、他のパソコンに比べたらファミコンに近い存在でしたが、やはりパソコンであり、発売されているゲームもファミコンとはちょっと毛色が違っていました。『カサブランカに愛を』、『殺人倶楽部』、『ラストハルマゲドン』、『サイキックウォー』といった作品は、俺に大人の世界を見せてくれたものです。

 

クラスの男子の半数がMSXユーザー

とはいえ、パソコンのソフトはクソ高いもの。7800円とかがデフォルトです。小学生や中学生がおいそれと買える金額ではありません。しかし、私はついていました。当時の私のクラスの男子の半数がMSXユーザーだったのです。おかげで、みんなでソフトの貸し借りをしたり、プログラムを打った自作ゲームを遊び合ったり、簡素なディスクマガジンを作ったり、楽しいMSXライフを送りました。

 

世間が、やれスーパーファミコンだ、やれメガドライブだ、やれPCエンジンだと騒いでいる中、俺たちはMSXというエデンで平和に過ごしていたのです。

 

先日、同窓会というわけではありませんが、中学時代の同級生たちと飲む機会がありました。そこで、俺はずっと前から疑問に思っていたことを口にしたのです。「俺たちのクラスってさ。やたらMSX持っているやつが多かったじゃん。あれ、異常だよな。なんでだったんだろう?」。みんなが一瞬ヘンな顔をして、言いました。

 

「お前のせいだろ!」

 

みんなが俺を責め立てます。俺にはまったく自覚がなかったのですが、あの頃の俺は、クラスのみんなにMSXがいかに良いかを語りまくっていたようで。俺の話を聞いているうちに、みんな、MSXが欲しい気持ちになっちゃったとか。とはいえ、みんなにとっても、あの時代、MSXゲームにふれたことはいい思い出になっているようで。MSXのことを語るみんなの笑顔は、少年のそれでした。