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『忍者くん 魔城の冒険』と、美少女と、おウチにお呼ばれの話。(後編)

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『忍者くん 阿修羅ノ章』は、『忍者くん』の続編です。ファミコン版では販売をUPL自身が担当しています。ジャンプアクションに磨きがかかり、大型ボスとの戦いがアツい作品に。ただし、難易度は高めです。今回の話に出てくるゲームは『魔城の冒険』なのですが、なぜ『阿修羅ノ章』の話をここでしているかというと、一応これはオチへ伏線だったりします。

 

 

 

 

「ちょっと待っててね」

 そういうとキャリーはパタンとドアをしめて、どこかに行ってしまいました。俺が取り残されたのは、大きな家の2階にあるキャリーの部屋。なんとその部屋には、テレビとファミコンもあり、なんとも羨ましいかぎり。

 

俺は借りてきたネコのように大人しくせざるを得ませんでした。正座して努めて冷静を装いながら、部屋の中を観察します。部屋全体の広さは8~10畳くらい。白を基調とした壁や天井。床に敷かれているじゅうたんは女の子らしいピンク。部屋にあるのは、ミニテーブルと学習机とベッドとタンスと本棚。本棚には少女漫画が並んでいたと記憶しています。

 

そして、なんかいい匂いがしました(ほわーん)。

 

よくよく考えてみれば、女の子の家にお邪魔するのはちょっと久しぶり。幼稚園や小学校低学年まではそういう機会もありましたが。

 

「お待たせ。あら、『忍者くん』やっててよかったのに」

 

ドアを開けて現れたキャリーは、お盆に飲み物とおやつを持って、そしてさっきとは違う服を着ていました。部屋着というもので、上流階級の人たちは学校に行くときと、部屋でくつろぐ時と、別々の服を着る文化があることに、スラムドッグの俺は大層驚きました。

 

キャリーが持ってきてくれた飲み物が、とてつもなく美味しかった。それが、ミルクセーキ。お菓子も、なんか上品そうで高そうなものばかり。(なんか、やっぱ、いろいろ違うなぁ…)と子供心に思ったものです。

 

首元が大きく開いたラフでありながら可愛らしい服を着たキャリーと俺は、隣に座り合って、『忍者くん 魔城の冒険』をプレイしました。

 

なんか、いい匂いがしました(ほわわーん)。

 

 キャリーは忍者くんが敵の攻撃を受けるたびに「あんっ」「あんっ」と小さな悲鳴をあげるので、(かわいいなぁ)と思いました。しかし、ここにて俺は、ある疑念と向き合わざるを得ませんでした。それは、お呼ばれまでした俺は、彼女に何を期待されているのか?ということです。

 

『忍者くん 魔城の冒険』の超絶プレイ? それならお門違いです。なぜなら、『忍者くん』をプレイするのは今日が初めてだったから。

 

男子として女の子を楽しませる? いやぁ、どうでしょう。そういう役割は、女子と遊び慣れているスクールカースト上位男子がやるべきです。

 

何が求められているのか? なぜ自分がお呼ばれしたのか? 謎・謎・謎…!アトランチスの謎Dr.ワイリーの謎!コンボイの謎! というか、何か期待されているのに、期待に応えられなかったら、超絶気まずいんじゃないか? ガッカリさせてしまうんじゃないか? そんなネガティブ思考がアタマの中をぐるぐるぐる。そして出した結論は、撤退戦への移行。キャリーを失望させないようにきれいに帰る。これが今の自分にとっての最高の一手と考えました。

 

「『忍者くん』って、ゲームセンターにもあるんだよ。知ってた?」
「知らない。そうなの?」
「駅の向こうにしまむらあるじゃん。あそこにあったよ」
「そうなんだ。知らなかったな」
ファミコン版とちょっと違ってて、違う敵も出てくるよ。絵もキレイで」
「ゲーム、くわしいんだね」

 

(よしよし、いい感じの撤退戦だ、いい感じにトーンダウンしているぞ…。この良好な雰囲気のまま、問題は"いつ帰るか"だ…!)

 

その時である。下腹部にヘンなものを感じたのは。キュルルンときたこの感覚は、なんだ? 不愉快だな? そう、我々は知っている。この感覚を知っている。

 

それは、 便意

お腹が痛い。すっごくウンコがしたい。

 

しかし、小学生にとってウンコはダメなのです。学校でもウンコはしません。してはならなりません。大の使用は許されないのです。トイレにおける大の使用=ウンコくんのあだ名がつけられてしまいます。そして、友だちと距離を置かれてしまうのでした。鉄ケツのオルフェンズになっています。クラス1の美少女の家でウンコなど、言わずもがなでしょう。

 

しかしケツ論から言うと、俺はウンコをしました。30分くらい我慢してみたのですがダメだったのです。漏らすか漏れるかの二択しかない状態まで追い込まれ、人間としての尊厳を取らざるを得なかったのです。「そろそろ帰ろうかな」と何度も打診してみたのですが、なぜかキャリーが「まだいいじゃない」と許してくれなかったので。もうウンコするしかない。うれしいが悲しい。だから、小のトイレを借りる体でトイレに行き、小と同じくらいの時間で大をすることにしました。

 

ここだけの話ですが、メリメリメリメリ…とすごい量が出ました。しかし、背徳感は通常プレイでは得られない快楽を引き出すもの。そのことを俺はこの時に知りました。早すぎる快楽の便座。早期に問題が解決したので、神速でトイレ撤退です。晴れやかな気持ちでキャリーの部屋に戻った俺は、たぶん、ツヤツヤした顔をしていたと思います。

 

ところが、です。

 

「あれっ?」とお腹を押さえたキャリー。「私も、トイレに行ってこようっと」と、ヨロヨロと立ち上がりました。彼女は部屋を出て行くときに「内緒だよ☆」と。男子の前でオシッコ行くのが恥ずかしかったのでしょう。ウンコだったかもしれません。

 

ほどなくして、トイレからジャーと水が流れる音を聞いて、俺はハッとしました。(あれっ、俺、さっき、トイレ流したっけ?)。急いでいたせいか記憶がありません。おや? あれ? ひょっとして、自分は何か、

 

取 り 返 し の つ か な い こ と を し て し ま っ た の で は あ る ま い か ?

 

ガチャとドアが開く音がしました。ふり返るとそこには、

 

阿修羅がいました。

 

そこからどうやって家に帰ったのか。記憶にありません。この記事を読んで、まったく『忍者くん』のゲーム描写がないことにお気づきの読者もいらっしゃると思いますが、実は俺はこの件がトラウマで、いまだに『忍者くん』をプレイする気が湧いてこないのです。

 

そして、翌日の学校から、親友だったビッグスとウェッジに距離を置かれるようになりました。あの訴えかけてきたメッセージを無視した報いです。キャリーとはその後一度も目を合わせたことがありません。ずいぶん後になって、成人式でモデルのようにキレイになった彼女と再会しましたが、やはり目を合わせてくれませんでした。くそっ。

 

彼女があの日、なぜ俺を家に呼んでくれたのか。それは今なお謎のままです。

 

そして、クラス1の美少女から唯一お呼ばれしたことは、クラス中の男子からの嫉妬を受けることになり、俺は孤立することになりました。踏んだり蹴ったりです。そんな俺の前に、1人の男が姿を現します。

 

「ジョーンズくん、君はセガのゲームはお嫌いかな?」

 

それは、クラスに1人しかいなかったセガユーザー、セガール(仮名)からの接触でした。かくして俺は、ここからしばらくセガのゲームに寄り道することになったりするのですが、それはまた別のお話で。