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【その道のプロから話を聞く】お客様はホトケさま。遺体配送ドライバーという仕事の話。

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その人と出会ったのは、都内某所の飲み屋さんでした。たまたま隣の席で、なにやら面白い話をしているので、「あのー、聞き耳立てていたようで申し訳ないのですが、あまりにも面白いお話だったので、くわしく聞かせてもらえませんか?」とお願いしてお話を聞いてきました。彼の名前は室井さん(仮名)。年齢は37歳。仕事は「遺体配送ドライバー。今回はこのときに聞いた「遺体配送ドライバーという仕事をご紹介したいと思います。

 

 

 

そもそも「遺体配送ドライバーとは何をやる仕事なのか。いや、仕事内容はなんとなく分かります。遺体を配送するのでしょう。気になるのは、「いつ・どこ」という点です。

 

話を聞いてみると、「病院⇒葬祭場」「病院⇒自宅」「警察⇒葬祭場」「警察⇒自宅」と、いろいろなのだそうです。葬祭場のクルマだと思ったら、実は葬祭場から委託されている遺体配送会社のクルマということが多いのだとか。つまり、葬祭場としては、いつ出番があるか分からないドライバーを自社で採用すると人件費がかかってしまうためアウトソースしているということ。ちなみに、この遺体配送会社は地域の複数の葬祭場と契約を結んでおり、死人の多い夏場はかなり忙しくなるという話でした。

 

ウチの父親のときのことを思い返すと、葬祭場は病院からすぐそこ(300メートルくらい)なのに、やたら来るのに時間がかかって待っていたり、やたら配送料が高かった気がします。しかし、このからくりを知ると「なるほどなぁ」と思いました。

 

遺体を配送するときに使用するクルマは、霊柩車とほぼ同じ装備の霊柩車じゃないクルマだそうで。これは普通自動車免許で運転できるそうです。

 

遺体配送は基本的に2人1組で行動するとのこと、その理由は、動かないとはいえ、人1人を動かすのは力仕事になりますので、大人2人は必要だそうです。ちなみに、遺体を運ぶのはストレッチャーみたいな担架みたいな器具を使うそうで、手袋をはめて遺体を服の上から触って運ぶそうです。手で直接触ることはないらしく、理由は「死んでいるとはいえ、お客様として丁重に扱うため。失礼なことはしない」ということでしたが、「ぶっちゃけ触れたくない」というのもあるのではと私は勘ぐりました。

 

一番気を使うのは、自宅への配送だそうです。ストレッチャーのような器具を使用できない間取りの家も少なくないようで、その場合は2人がかりで運びます。1人は脇の下に手を置いて、もう1人は両足を持って、という具合。

 

「なぜ、その仕事をやっているのか?」と聞いてみました。実は室井さん、以前タクシードライバーをされていたそうで。酔っ払ったお客様から暴行を受けたらしいんですね。そういうお客さんのほうが珍しいのですが、そのときの恐怖から、人を乗せる、無茶な要望をいろいろ言われる、という仕事が本当にイヤになってしまったのだとか。

 

その点、遺体配送の仕事は、乗せているお客さんは何も言わない。無茶な要求もされない。行き先はハッキリ分かるし、料金支払いのトラブルもない。そういう点で気がラクなのだそうです。

 

「幽霊を見ちゃうことはあるのか?」と聞くと、「私はないですね」とのこと。しかし、「相棒が見た」ということはあったそうです。

 

それは、ちょうど今頃の話。2人は病院で亡くなった方の遺体を葬儀を行なう自宅へ搬送することになったそうです。片道1時間半。その間、2人はひと言も話すことなく、目的地を目指したのだとか。東京郊外にある遺体主のご自宅に着いたのは午前2時すぎ。さきに連絡がいっていたので、ご家族の方は電気をつけて待っていてくださいました。先輩である室井さんは、相棒を車に残して、ご自宅にあがります。遺体をお運びする部屋の位置を確認することと、布団などのご用意をお手伝いするためです。準備が整って、室井さんが車に戻ると、相棒の話し声が聞こえます。

 

「へえ、そうなんですか。すごいですね」

「いやー、僕なんか、まだまだ全然なんですよー」

 

(あの野郎、仕事中は私用の電話はするなって言ったのに!)

室井さんは、言いつけを守らなかった相棒にカッとなり、車に乗り込んだそうです。すると相棒は電話などしていません。車後部の遺体を安置しているスペースの壁に向かってしきりに話しかけているのです。

 

「おいっ!」と肩を掴むと、相棒はニコニコ笑いながら「あっ、室井さん。早かったですね」と答えたそう。「お前、誰としゃべってんだよ!」「やだなぁ、この人ですよ」と笑顔のまま後部座席を指差します。一瞬あって、「あれ?」と相棒。そのうち、ガタガタガタと震えだして、「僕、誰と、話していたんでしたっ…け?」と、顔を真っ青にして言ったそうです。

 

翌日、相棒は辞表を出してこの仕事を辞めてしまったのだとか。「見ちゃったら、もうできないですよ、この仕事。自分があらためて何を扱っているのか、はっきり分かっちゃうんで」が、相棒さんと交わした最後の言葉だったとか。

 

しかし、室井さんはこの仕事を辞めるつもりはないとのこと。

 

「自宅や葬祭場に運ぶのを手伝っている仕事ですから。恨まれる筋合いはないですからね。化けて出てきたとしても、化けて出てきてまでお礼を言ってくれるのかと、感謝ですよ。死ねばみんな、仏様になるんですから。タチが悪いのは生きている人間のほうですよ。世の中、クズばっかり。お酒を飲むのと飲んだときに人に迷惑をかけてもしょうがないと考えている奴は、本当にクソですね」

 

というお話でした。

世の中には知らないだけで本当にいろいろな仕事があるものですね。

 



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