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【映画レビュー】『IT/それが見えたら、終わり。』はホラー映画じゃない。ジュブナイル映画だ。

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1980年代のメイン州デリー。この町では子どもたちが急に姿を消すという神隠しが多発しており、町には行方不明者たちを探すビラが貼りまくられていた。州警察も捜査に力を入れるが犯人の手かがりすら見つけられない。

 

一方で、子どもたちは幻に襲われていた。その幻は1人の時に襲いかかり、恐怖を植えつけていく。そこに現れる謎のピエロ。そんな話、大人は信用してくれない。しかし、行方不明事件の犯人はあのピエロだ。そう確信した子どもたちは自分たちの手で解決を試みる。正体不明の“IT(それ)”に対抗できる武器は、立ち向かう勇気――!

 

スティーブン・キング原作の『IT』、2回目の映像化です。ホラー映画のようなプロモーションをされていますが、作風としてはホラー要素の強い『スタンド・バイ・ミー』。夏休みに、真実を知った子どもたちが、自分の身を守るために、愛する家族を守るために、怖いけど勇気をふりしぼって町を恐怖で支配する“IT”に立ち向かう、という物語です。

 

主人公は、スティーブン・キングの作品によく出てくるクラスの底辺層の子どもたち。全員が“負け犬”のレッテルを貼られ、クラスのイケている奴らの目にとまってちょっかいを出されないように、身を潜めて暮らしています。

 

彼ら・彼女らは、自分自身や家族に、さまざまな問題を抱えており、それとなんとか折り合いをつけて暮らしていました。しかし、正体不明の“IT”の襲撃を受けて、恐怖を感じるのですが、その先に怒りを感じ始めます。彼らはただでさえ日常生活で追い詰められているのですが、追い詰められたネズミはネコ相手でも戦いを挑むもの。そして彼らは、同じものが見える被害者同士として、連帯感を高め、いじめっ子に、自分を苦しめている問題に、正体不明の“IT”に、反逆の狼煙をあげるというのが、この作品の核といえます。

 

原作を読んでいる人は丸分かりですが、本作は二部構成。子ども時代に“IT”を撃退した少年時代編と、29年後に再び姿を現した“IT”に立ち向かえない大人時代編で構成されています。

 

今回の映画は少年時代編の映像化なのですが、ぜひ続編として制作されている大人時代編も見ていただきたいです。むしろ、こちらのほうが面白い。「子どもの頃、なぜ、こんなにも恐ろしいものに立ち向かえたのか分からない。今は怖くてこわくて仕方がない。もう勘弁してくれ。あの時精一杯やったんだからもういいじゃないか。二度と関わりたくないんだ」と、絶望する大人になった主人公たちがとてもリアル。

 

しかし、ただ大人を無力な存在として描くのではなく、「人生で培ってきた知識と技術を舐めるな!」と少年時代の勇気を取り戻して、再び“IT”と向き合っていく姿は、日々の生活に疲れている私たちに何よりの応援歌になるでしょう。

 

少年時代編は、眩しいです。主人公たちは、誰かが私たちでもあります。描かれているあの日の出来事も、恐怖も、少しカタチを変えて私たちにもかつてあったこと。『IT』は、私たちが忘れている何かを取り戻す物語です。

 

今回の映画自体が絶賛するほど出来がいいかというと、そうでもないのですが、でも、原作の雰囲気をよく表現してくれていると思います。ぜひ、原作の小説のほうも読んでみていただきたいです。必読!