ほぼ日刊レトロゲームレイダース

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【マンガの話】『ビッグオーダー』が、どうしてあそこまでつまらないのか理由を考えてみた。

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『ビッグオーダー』は月刊少年エースに連載されていた漫画で、描いているのは『未来日記』えすのサカエ先生。現在は完結しており、単行本は全10巻です。なので、この際、単行本をきちんと買って最初から最後まで読んでみようと思ったわけで。結論、つまらなくて憤死するところだったんですよ。

 

 

もちろん、面白い・面白くないという判断は一人ひとりの趣味趣向によるところが大きいので。私がつまらないというものが万国共通の認識なわけがありません。事実として「ビッグオーダーがつまらない」と感じたことに対して、何を期待して何を裏切られたのかを考えてみました。

 

■期待したこと

『未来日記』のようなハラハラ&ドキドキ&お色気ありの物語を期待していました。『未来日記』は面白いんですよ。突如、未来予知が可能になったケータイを所有した12人が自らの生存をかけて殺し合いをするという話なのですが。日記所有者各自が所有していたケータイの日記目的によって、予知できる未来の範囲が違うのです。主人公の雪輝くんの「無差別日記」は自分が見た周囲の様子を予知できるのですが、逆に言えば自分が見ていないことは予知できません。ヤンデレヒロインである由乃の「雪輝日記」は雪輝くんのストーカー日記なので雪輝くんに関することがなんでも予知できます。

 

なぜ、このような殺し合いをしなければならないかというと、世界の創造主たるデウスによる後継者争いに巻き込まれてしまうわけです。デウス自体は雪輝が想像の中で作った存在だったのですが、創られたがゆえに存在してしまったのがデウスなわけで。神の奇跡によって変えたい未来をかけて、日記所有者たちは人知れず日記所有者を殺す戦いをはじめることになったのでした。

 

『未来日記』の面白いところは、ルールが厳格で、ルール内での創意工夫と心理戦で敵を圧倒するという戦いである点です。与えられた特殊能力で敵を倒すのではなく、特殊能力を駆使した自分が敵に勝つという点。『ジョジョの奇妙な冒険』の第三部・第四部のスタンドバトルに通じるところがあります。

 

ストーリー展開も期待を裏切るものが多く、「戦いを通して雪輝と由乃の信頼関係が深まる」⇒「由乃による雪輝拉致監禁」というように、「えっ、なんで!?」という予想できない展開ばかり。それらもただ読者をふり回すだけでなく、きちんと次のエピソードの繋ぎや伏線になっていました。

 

この手のストーリーは、「敵が現れて、倒したら次の敵が現れる」という展開にならざるを得ないのですが、敵の攻撃方法や未来日記の使いかたがどんどん工夫されていき、敵自身の戦わなければいけない理由も切実で、お互い引けない緊張感。すごく考え込まれているのが分かります。ずっと謎だったヒロイン由乃ちゃんのヤンデレ&人を殺すことを躊躇わない様子なども、「こうきたか!」という納得のいく真実(ミステリーとしては反則かも)であり、唸らされたものです。

 

■裏切られたこと

ただのなろう系異能力者バトルでした。主人公エイジくんの能力(この世界ではオーダーといいます)であるバインドドミネーターは、"支配"さえすれば、なんでもどうとでもなる能力。能力に弱点がないわけではないのですが、よく分からんのです。つまり、作中で「やべえぞ!」と叫んでいてもですね、読み手は全然ヤバイ感じがしないんですよ。そのためストーリーに緊迫感がありません。

 

それでですね、登場人物の数がめちゃくちゃ多いんですよ。そして、登場人物の数だけオーダーがあるので、覚えなければならないことは2倍です。それだけ登場人物が多いがゆえに、一人ひとりのことをきちんと描ききれないのは当たり前で。でも中途半端に描こうとするので、中途半端に話が重くなるのです。そのせいで本作は、RPGでいうと、街やダンジョンでの物語にだけスポットを当て、フィールド移動はすべてナレーションで済ませるといった感じ。でも、日本全国が舞台なのですが、背景が書き込まれていないから、いつも同じようなところで戦い、地面が崩れて、しばらく気を失った後に目が覚めて、妹の名前を叫ぶ。これのくり返しです。

 

しかも、オーダーバトルに厳格なルールがあってないようなものなので、『未来日記』に比べると納得感もなければ、面白さもなくなってしまいました。なろう系小説なら俺TUEEEでまだ気持ちいいところがあるわけですが、エイジくんはすぐ弱みを握られてすぐに人に利用されるので、毎月の給料日に借金のことを考えないといけないような閉塞感があります。

 

一番の要因は、主人公に共感できないことです。主人公は義理の妹である瀬奈ちゃんを守ろうと必死なんです。必死なのは分かるんですが、これが狂人の域。しかも、エイジくんの瀬奈ちゃんラブなせいで、ほぼ全編にわたってストーリーの滞りが発生。読者のイライラの原因が瀬奈ちゃんになっているかのようです。他の登場人物が諌めようとしても「うるせえっ!」と言うことをまったくきかない主人公。そして床が崩れて、しばらく気を失った後に目が覚めて、妹の名前を叫ぶ。これのくり返し。

 

エイジくんは瀬奈ちゃんのことが好き。原作者であるえすのサカエ先生も瀬奈ちゃんのことが好き。でも、読者は瀬奈ちゃんのことがそんなに好きじゃないと思います

 

■結論

えすのサカエ先生としては、「『未来日記』では設定が入り組んだ話を書いたから、今度は別方向のお気楽な作品を描こう」と思っていたんじゃないでしょうか。オーダーあたりの設定の甘さに繋がっていると思います。しかし、話し合いの中で相手をやり込める的な『未来日記』風味を出したがために、読者も第二の『未来日記』を期待してしまうわけです。

 

しかし、『ビッグオーダー』『未来日記』と本当に同じ作者か?と思うくらいストーリーが本当にグタグダなのです。2巻くらいまではいいんですけどね。なので、ひょっとしたら『未来日記』のほうがえすのサカエ先生的にはイレギュラーで、ストーリーテラーとしての技術は『ビッグオーダー』のほうが平常運転なのか。そんな疑いまでわき出てしまうほど、世界設定、オーダー、登場人物、ストーリーが空回りしています。

 

もともと入念に考えていたストーリーの軸を、途中で別方向に転進させたせいで、スカスカの状態でやらざるを得なくなったような、そんな印象を受ける作品です。「作品の雰囲気が変わったな」と感じる箇所は、やっぱり瀬奈ちゃん絡みなのですが。

 

瀬奈ちゃんが救われるべきヒロインとして鎮座したままでいてくれれば、エイジを親の仇と考えている紅鈴ちゃんに、間違って「伴侶になれ」とオーダーしてしまった設定も、いい感じで活かせたんじゃないかなぁと、残念に思う今日この頃です。